継続的に取り上げているH2Oリテイリング(8242)とオーケー(非上場)の関西スーパー(9919)を巡る買収合戦、10月8日付の記事では全体像をまとめており、これまでの経緯をご理解いただきやすいかと思います。より詳細を確認されたい方は、それ以前の記事もご参照いただければ幸いです。

H2O・オーケーの関西スーパー買収合戦、注目ポイント・売買判断は?(2021年10月18日)

株主の伊藤忠食品が関西スーパーに質問状を送付

まずは天王山となる10月29日の関西スーパーの株主総会に向け、追加の動きも出ているので、ご紹介したいと思います。9月3日付の記事では「今回、関西スーパーの株主の企業もH2Oかオーケーを選ぶ際に、自身の株主等に説明ができる必要があるでしょう。」と書きましたが、10月12日に関西スーパーの株主である伊藤忠食品(2692)が関西スーパーに質問状を送ったことを明らかにしました。伊藤忠食品は関西スーパーの4位株主で、4.75%の株式を保有しています。

【図表】関西スーパーの主要株主(2021年3月31日時点)
出所:関西スーパー有価証券報告書よりマネックス証券作成

H2Oもオーケーも保有している株数は限定的ですので、その他の株主がどう動くかが株主総会の焦点の1つです。また、関西スーパー自体はH2O案に賛同を示していることから取引先持株会など特に関西スーパーと関係の深い株主は第三者とは言いにくそうです。そういった状況の中、伊藤忠食品や国分グループ本社のような第三者がどう動くかは、他の株主への影響も大きいと言えるでしょう。そして、今回の伊藤忠食品の質問状はどちらかというとオーケーに対して追い風であるように読めます。

伊藤忠食品は質問状の中で「残念ながらかかる重要な意思決定(筆者注:株主総会で伊藤忠食品がどのように投票するか)を行うにあたり、現時点で貴社から検討に足る十分な情報・検討材料が開示されているとはいえません」としています。その上で、関西スーパー側に対して以下のような点を示すことを求めています。

・関西スーパーが合併するイズミヤ・阪急オアシスの価値評価額と算定根拠の具体的数値
・会社法上、株主総会で反対票を投じた場合、関西スーパーに買取請求が可能で、その際の買取価格は「公正な価格」だが、その価格はオーケーの公開買付価格(2,250円)を下回らないか
・イズミヤ・阪急オアシスの開示内容にH2Oが表明保証(開示内容が正しいことを保証)しているか
・合併後の新関西スーパーの目標株価(と達成時期)、配当など株主還元の方針
・オーケーとの経営統合提案に関し、日時・参加者・内容など、どのような協議が行われたのか

これらの質問を見ると、かなり根本的な部分で、関西スーパーの株主にとって、H2O提案が良い提案なのかが検討できない(疑問である)と考えているように思われます。また、伊藤忠食品の質問状が発表された後の10月15日には、オーケーが議決権行使に影響力の大きい米国の議決権行使助言会社2社もH2O提案の反対を推奨していることを確認したという旨のプレスリリースを出しています。

関西スーパー、反論含め続々と情報を開示

関西スーパーもこれらの動きに対して迅速に動いており、これらの反対につながりかねない動きを警戒しているように見えます。時期は前後しますが、10月5日にはイズミヤ・阪急オアシスの直近の決算書類を開示、15日にはH2Oと共同で株主向けのメッセージを提示、さらに伊藤忠食品の質問状への回答となりうる部分も含む、2回目の株主向けFAQを発表しています。そのFAQでは過去の経営実績と統合する3社別(関西スーパー・イズミヤ・阪急オアシス)の将来の収益見通しなども発表しています。また、関西スーパーは、米国の議決権行使助言会社2社の意見は(関西スーパーからの)追加開示がなされた直後に発行されており、10 月 15 日に開示した内容を考慮していない可能性があるとしています。

いずれにせよ、このような情報が続々と開示されることは、現時点で関西スーパーの株主の方、関西スーパーへの投資を検討される方、それぞれにとって非常に良いことのように思います。また、このような緊張感を持って「株主の利益」が争われること自体、日本株投資家、ひいては日本の資本市場にとっても良いことでしょう。しかし、開示情報が充実するものの、一般の個人投資家がこれらの情報を吟味することは容易ではなさそうです。

例えば、先ほどの関西スーパーによる2回目の株主向けFAQはA4横のPDFファイルで、実に27ページという大部になっています。質問も実に24問と多くなっています。伊藤忠食品の質問状もA4用紙で2枚分はぎっしりと質問が書かれています。専門家でもない限り、なかなか読み進めるのは簡単ではないでしょう。専門家でも多くの企業の情報の確認は難しいため、「議決権行使助言会社」も存在しているのだと言えます。

しかし、今回は関西スーパーが個人株主の多い企業であることもあってか、H2O・オーケーそれぞれが取材への対応なども行っており、ウェブメディアなどで両社の主張が分かりやすく解説されています。次回は両社の主張を見ていくと同時に、今回の関西スーパーの買収について改めて考えてみたいと思います。