昨年のリーマン・ショック以降、世界中で最も回復が早い国々といえば新興各国であることはご存じだと思います。一方リーマン・ショックのような大きな経済的な打撃があったときに、非常にもろく、大きく下落するのを目の当たりにして投資対象として怖いと感じた方もいらっしゃることでしょう。
新興国は経済上で外部(外国)の影響を大きく受けやすく、相場のボラティリティが大きいものです。もちろん、ボラティリティが大きいということは、それだけチャンスが大きいということ。この1年の値動きはまさにそうした感がありますよね。

タイトルに「再考」と書きましたが、投資すること自体を見直そう、という意味では全くありません。冒頭に書いたように、ボラティリティの高さから短期売買によってリターンを得ようというスタンスの方も多いと思いますし、逆に怖がって投資を敬遠する方もいらっしゃると思いますが、その投資スタイルを「再考」してみませんか、ということからつけたタイトルです。
私の投資スタイルは投機的・短期的なものではありませんが、このボラティリティの高い地域への投資はぜひともポートフォリオの一部に入れるべきだと考えているからです。

前述したとおり、新興国のリスクとしては大きく下記のようなものがあります。
● 株式市場のボラティリティの高さ → 価格変動リスク要因

● 政治・経済の不安定さ・インフラ基盤等の未成熟さ          
             → 為替リスク要因  

             → 金利政策の不安定さ・・・金利リスク要因
             → カントリー・リスク要因

世界中どの国に投資するにおいても、上記のようなリスクはあるものですが、新興国の場合は先進諸国のそれに比べ、こうしたリスク度合いはより大きくなることは明白です。
ただし、それを上回るだけの魅力があることも確かでしょう。

● 経済成長の大きな要因の一つである人口(この場合、日本のような高齢人  口ではなく、もちろん労働力人口のことです)の増加

● 豊富な天然資源

● 大きなインフラ・ニーズ(日本の60年代と同様、国民の生活レベルの上昇  に合わせたインフラのニーズ)

こうした魅力はすぐリターンに結びつくこともありますが、それ以上に、ある一定の長期的な視点に立ってみた方が大きなものとなってかえってくるのではないでしょうか。保有中のボラティリティの大きさによる評価額の変動は大きいとは思いますが、経済成長に裏付けされたものであれば、長期的に見れば右肩上がりが期待できるものです。

長期保有をするために、より安全性を高めるにはさまざまな分散を心がけることとなります。

● 投資対象商品の分散 ・・・ 株式、債券、コモディティなどへの分散。  多少でも値動きの異なる市場に分散すべきでしょう。特に「価格」が崩れ  たときに「金利」でリターンを確保する、というようなバランスにしたい  ところです。

● 投資対象国の分散 ・・・ 新興国は同時に打撃を受けることも多いです  が、各国の成長スピードも、政治事情も異なるため一国集中は非常にリス  クが高いです。為替リスクの分散にもつながります。

● 全体のポートフォリオの中で、新興国向けの投資割合のコントロール   ・・・気がつくと総資産のうち大半を新興国のもので保有してしまうとい  ケースがありますが、それではリスクの取り過ぎです。

リスクを取らなければリターンを得られません。リスクを取らない方がリスクとも言います。ただしリスクの取り過ぎは破たんにつながりかねません。ご自身のポートフォリオに成長を期待できる新興国エリアの投資もバランスよく加えてみてはいかがでしょうか?

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー