9月20日は一時5.09%の調整となるも引けにかけ急ピッチの回復
S&P500は9月2日のザラ場中に史上最高値を更新してから、9月は先週まで1.98%下がってきていましたが、9月20日の1.7%の下げをもって9月は3.65%の下落となりました。ただ、9月20日のザラ場中に一時4,305.91ポイントまで下落、前日比で2.87%下げましたので、これにより9月2日の史上最高値から5.09%の調整を果たしたことになります。
その後、最後の43分間で急ピッチで51.82ポイントの回復を演じ、最終的に9月20日は1.7%の下げに留まりました。史上最高値からの5%の下げは、2020年10月来の下げとなります。
NYダウもナスダックも9月20日のザラ場中にそれぞれ史上最高値から5%を超える調整の後、引けにかけて急回復して1日を終えています。
ビットコインも10%下落し、一時43,000ドルを切る展開となっています。その一方、金価格がしっかりとしており、原油価格下落もあり、金利が下げ、債券が買われるという「質への逃避」が起きています。これらはいわゆるリスクオフの展開です。
9月20日の急落の背景は?
米国市場では今までそれほど注目されていませんでしたが、9月20日はアジア発のニュースが下落のトリガーとなりました。中国の不動産開発会社、中国恒大集団の資金繰りを巡る懸念により、経営破綻の可能性が高まってきたことを受けて、9月20日アジア時間でハンセン指数が4%下落したことがきっかけとなりました。
他にも、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)が本日(9月21日)から予定されており、ここでテーパリングの可能性について触れられるのではないかという懸念があることです。
また、米国はデルタ株の感染者数のレベルが改善しているとは言え、引き続き新規感染者数は1月のレベルにあります。北米はこれから気温が下がっていくので、その懸念もあります。
9月の米国株は弱いというアノマリーもあります。
これらの環境は、9月20日にマーケットが下がった要因となりましたが、決して目新しいニュースではありません。
今回の調整は買いのチャンス
私は、今回の下げは一時的なもので、スピード調整となり、買いのチャンスだと考えています。その理由は4つあります。
9月22日(水)(米国時間)、FOMCでFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長のスピーチが予定されています。前回のFOMCでパウエル議長は年内にテーパリングを行うと述べました。今回のFOMCでパウエル議長がどこまで突っこんだコメントを出すかが焦点となります。私はこのようなマーケットの下げの最中に、パウエル議長があまりにもネガティブなことを言うのは考えにくいと思っています。それが、まず1つ目の理由です。
2つ目の理由は、市場には史上最高レベルの潤沢なキャッシュがスタンバイしているということです。
3つ目の理由として、企業による自社株買いが挙げられます。2021年の米国株式市場で一番の株の買い手は個人投資家ですが、次に来るのが企業です。つまり、企業による自社株買いです。
7月末までに6,830億ドルが発表されており、これは2020年の倍以上です。既に2019年のレベルも超えています。2018年が史上最高ですが、これを超える勢いとなっています。先週もマイクロソフトが今の時価総額の3%に相当する600億ドルの自社株買いを発表しています。
4つ目の理由は企業業績です。米国の業績については、第3四半期の決算発表が10月半ばから本格化しますが、現時点では前年比28.4%の増益予想です。第2四半期の決算発表では、多くの企業の経営陣が今後の業績について強気の見方を示しました。
今回の下げはたまたまセンチメントが弱い9月の出来事であり、これでマーケットが長期にわたって下がるということではないと私は考えています。
先週の金曜日(9月17日)と比べて、月曜日(9月20日)に米国のファンダメンタルズが変わったためということではありません。月曜日(9月20日)の下げはあくまでも「センチメント・ドリブン」の下げであり、米国株の長期上昇のための一時的なガス抜きであると思います。