新型インフルエンザの日本国内での感染が広がりつつあります。現在は関西地域のみですが、東京に伝わるのも時間の問題でしょう。橋下大阪知事が会見で「このままでは都市機能がマヒしてしまう」と発言されていましたが、東京で同様の状況になった場合、人口密度も飛びぬけて高く、政治も経済も集中している首都だけにより深刻な事態が予想されます。

インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)といえば、1918年から翌19年にかけて大流行した「スペイン風邪」があります。「スペイン風邪」は毒性が強かっただけでなく第2波、第3波と病原性が強まりながら世界流行したとのこと。また、当時の医療技術や対処、情報速度などが現在と大きく違ったことが被害を大きくしていったのでしょう。(当時の世界人口18億人に対して感染者は6億人、死者は5000万人におよんだとのことです。)
今回の新型インフルエンザは弱毒性ということですし、早期の適切な処置で回復するということです。また、即時の情報開示や神経質とも思えるほどの対処を取られていることから、「スペイン風邪」のような事態にはならないと思われます。

とはいえ、パンデミックという状況になったとき、様々な経済的な悪影響は考えられます。事実、今回のインフルエンザの発祥地とされるメキシコでは観光客も来なくなり、商店やレストラン、ホテルなどに閑古鳥が鳴く状況で大きな打撃となりました。
実際に感染してしまった人はもちろん大変なのですが、人が集まることによって商売が成り立つような業種においては実際の感染者が周囲にいなくても大きなマイナスとなってしまいます。そして、そのような業種で仕事をされている方にとっては家計に直結する一大事となってしまいます。

ご存じの方も多いかと思いますが、損害保険には「所得補償保険」という種類の保険があります。こうした保険は入院していなくても、病気やケガなどの理由で就業不能の状況において所得を補償してくれるというものです。
ですが、残念ながら一般の所得補償保険では本人の健康状況によって就業不能な場合のみの保障となるため、本人が発症していない場合、もし隔離もしくは地域特例による店舗の一時閉鎖のような状況になってしまったとしても、保障の対象外になってしまうとのことです。ちなみに本人が発症していたとしても、90日以上その状況が続く場合と限定していることが多いようです。(某保険会社に問い合わせた結果ですので、すべてが同様とは限りません。)
つまり本人が発症したのではない、パンデミックの影響による収入減については保険などでは対応が難しいといえるでしょう。

このタイミングではインフルエンザにかからないように皆で注意するくらいしか手を打つことはできませんが、今後のことを考えて、月並みではありますが、不測の事態に備えて月々の収入の3~6ヶ月分の予備資金の用意や、いざ自分が発症することも踏まえての入院保障(医療保険)や前述の所得補償保険などへの加入など自己防衛をしっかりしておくようにしましょう。
社会保障は残念ながら万全ではありません。他人まかせにせず、自分自身で予防線をはって生活を守る体制を作るしかないことを認識する必要がありますね。

廣澤 知子
マネックス証券 シニア・フィナンシャル・アドバイザー