9月10日のマーケットの足を引っ張ったアップル「フォートナイト訴訟」の判決

S&P500は先週金曜日(9月10日)まで5日連続で下げ、9月に入りこれまでのところ1.42%の下げとなっています。テクノロジー銘柄の多いナスダック総合指数は同期間0.94%の下げです。

9月10日(金)にはアップルのアプリ市場運営が反トラスト法(独占禁止法)違反に当たると同社を訴えた米エピック・ゲームズ(人気ゲーム「フォートナイト」開発業者)の訴訟で、米カリフォルニア州の連邦地裁はエピックの訴えを一部認める判決を出しました。判決では、アップルはモバイル配信アプリ市場において独占しているとみなさないとの見方を示しました。一方、連邦地裁は同社がアプリ開発業者に同社以外の課金方法に誘導するのを規約で禁じてアップストアでの取引について30%の手数料を得ていることに対し、規約を緩和して外部課金への誘導を認めるよう同社に命じました。

9月10日(金)の米国株市場は5日ぶりに上昇する雰囲気がありましたが、このニュースを受け金曜日のザラ場中にアップルの株価は下がり始め、市場全体のセンチメントを悪化させました。

2020年に世界中でダウンロードされたアプリの数は前年比で7%増の2,180億、消費者がアプリ購入に使った金額は前年比で20%増の1,430億ドルと言われています。アップルのアプリからの売上は7%程度ですが、利益率が高く総利益の15%程度を占めています。今回の判決を受け、アップルはアプリ内購入のための外部課金への誘導という代替支払いオプションを提供し始めるのではないかと思います。アップルのエコシステムに留まるという使いやすさやセキュリティ上の利点を考えると、すべてのユーザーが外部購入を選択するとは考えにくいのではないのでしょうか。

なお、アップルの株価に影響を与える次のイベントは、9月15日の早朝2時(日本時間)開始予定のiPhone13等の新商品説明会です。
 

 「ロシュ・ハシャナの前に売り、ヨム・キプールの前に買え」

週末に「ロシュ・ハシャナの前に売り、ヨム・キプールの前に買え」という米国株式市場の格言を思い出しました。

ロシュ・ハシャナとはユダヤ教の「新年」のことであり、ヨム・キプールとは「償い、罪滅ぼしの日」という意味で、ユダヤ教では最も大事な祭日となっています。

では、なぜユダヤ教の新年の前に売り、罪滅ぼしの日の前に買うのでしょうか。この間はユダヤ教の人たちの宗教的なお休みであり、新年の前に株のポジションを手仕舞う傾向があり、大事な祭日の後にマーケットに戻ってくるからです。私たち日本人は年末に大納会を行い、お正月を迎える間マーケットは休場となりますが、ユダヤ教のお休み中も米国株式市場は通常通りに開いています。このユダヤ教の休みの間の米国市場では商いも細り、マーケットのパフォーマンスについても、この期間は下がることが多いと言われています。

これはユダヤ人のトレーダーがユダヤ教で最も大切な宗教上のお休みの前に忙しいからだと言われています。2021年のロシュ・ハシャナは9月8日に終わり、ヨム・キプールは9月15日に始まります。このアノマリーが起きるとすると、今週前半にマーケットはリバウンドを始めるということになります。

私たち日本人にとってはあまり馴染みのない話ですが、「郷に入れば郷に従え」という言葉もあります。米国の市場を見るのであれば、その市場の迷信というかアノマリーに注意を払うのもあながち間違いではないでしょう。