米国の株式市場が好調を持続しています。2021年8月第1週には、S&P500とナスダック総合指数が史上最高値を更新しました。NYダウ平均も高値圏で取引されています。
このようなマーケット環境の中、日本の個人投資家の間で外国株式に投資する投資信託が人気となっています。
外国株式ファンドに日本の個人投資家の資金が流入
ニッセイ基礎研究所のレポート(※1)によれば、外国株式投信には 2021年前半だけで4兆2,000億円もの資金流入があり、2020年の同期間よりも流入額は増加しています。これは、国内株式投信や外国債券投信の資金流出が続いているのとは対照的です。
テーマ型ファンドの新規設定によって、更に個人投資家の資金が外国株式投信に流れ込んでくることも予想されます。これは、相場環境が大きく変化しない限り、当面続きそうです。
このような相場上昇時における個人投資家の投資信託マーケットへの資金流入を見ると、そこには3つの気を付けるべきことがあるのがわかります。
相場の後追いになる個人投資家の投資行動
まず、マーケット環境による投資対象の変化です。
個人投資家には、値上がりしているものに投資したがる「順張り」の傾向があります。マーケットが好調になると、新聞や経済誌で好調な相場が取り上げられることが多くなり、それを見た人たちが上昇したマーケットに参加してくるのです。
このような投資行動は、相場の後追いになってしまい、結果として高値掴みになるリスクを高めます。株式市場で長期的にリターンをあげている人の多くは順張りより、下がったところでも購入できる「逆張り」の投資家が多いのです。
実際には下げ局面で、購入することは心理的には簡単にはできませんから、次善の策としては定額で積立しながら購入していく方が良いと考えます。
相場上昇局面ではリスクの取りすぎにも注意
また、マーケットの上昇局面においてやりがちな失敗は、リスクの取りすぎです。
これは、保有している株式の含み益が大きくなることによって、自信過剰となってしまうことが原因です。
外国株式の中でも特に好調な米国株に手持ちの資金を大量に投入する人が出てきています。アセットアロケーションによる資産の分散を無視した特定資産への過剰な集中は、マーケットの調整時に大きなダメージを受けることになります。
マーケットの上昇局面こそ、正しい投資方法を選択し、リスクコントロールに注意を払うべきです。
コストに見合ったリターンが期待できるか考えよう
さらに上昇局面で見えにくくなるのが、コストです。
2021年前半に外国株式投信に流入した4兆2,000億円の内訳を見ると、アクティブ型が3兆1,000 億円で、インデックス型が1兆1,000億円となっており、アクティブ型の人気が高いことがわかります。
しかし、大規模な資金流入が続いたアクティブ型投資信託では、年間の信託報酬が1.65%を超える商品への資金流入比率が高いことがわかります。
これは、同じ外国株式型投信でもインデックス型では、信託報酬が0.22%未満の低コスト商品への資金流入比率が高まっているのとは真逆になっています。
資産価格が全体的に上昇基調であると、価格の上昇にだけ注目するようになって、信託報酬のようなコストに注意を払わなくなりがちです。元々信託報酬は、ファンドから日割で差し引かれているので、コストとして見えにくいという点もその傾向に拍車をかけています。
高コストのアクティブファンドが全て悪いという訳ではありません。問題は、高コストを支払うのであれば、それを上回るだけの超過リターンが期待できるかどうか、という点です。それが実現できないのであれば、投資する意味がありません。
もし、年間1.5%の信託報酬の差があるとすれば、アクティブファンドがインデックスファンドのリターンを上回るのは、かなり高いハードルになります。
しかも、銘柄が分散されていない分、アクティブファンドの方がリスク(ボラティリティ)が高くなる可能性が高くなります。とすれば、もしコスト差し引き後で同じリターンになったとしても、シャープレシオ(どのくらい効率的にリターンが実現できたかを比較する指標)では、インデックスファンドに軍配が上がることになります。
外国株式投信への資金流入が続いているのは、外貨資産へのシフトを意味します。これは日本円に偏っている日本の個人投資家にとっては良い傾向だと思います。
しかし、同時に正しい投資判断を行うことも重要です。個人投資家に向けて、投資の基本的な情報提供がますます重要であることを再認識した次第です。
(※1)ニッセイ基礎研究所レポート「コストの二極化が進む投信市場」
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/68360_ext_18_0.pdf?site=nli