皆さんにとって、「働く理由」とは何でしょうか?
収入を得るためのもの・・・もちろん、ほとんどの方がそう答えると思います。一般的には仕事をしてお金を得なければ、家賃も食費も払えなくなってしまいますよね。理由も何も、働かなければしょうがない!ということかもしれません。

それでは、もし皆さんが大金を得たら、働くのを辞めるでしょうか?
宝くじで大金があたる、大金を相続する、投資(この場合は投機のことが多いかもしれませんね)が上手くいって資産が大幅に殖える、事業が大成功して一気に大金持ちになる、などなど夢に見ることは多くとも、現実になる人は極ごく一部の方です。皆さんの場合、もしその立場になった場合、仕事をすっぱり辞めると思いますか?

ビル・ゲイツをはじめ(彼は引退を決めましたが)、世界の大金持ちは、一生どころか二生、三生あっても使いきれないほどのお金を持っていても、ハードに仕事をしている人は多くいます。

これは女性に関してのみの調査結果ではありますが、(厚生労働省 「平成17年版 働く女性の実情」より)就業希望の45歳以上の層では「収入を得る必要」、次いで「時間に余裕ができた」、55歳以上の層では「健康を維持したい」が増え、60~64歳層では「健康を維持したい」が最も多いということです。もちろんこの数年の間に事情は変わってきている可能性もありますが。

なぜ、こんなお話を書いているかといいますと、この週末に知人から聞いた話で、何となく腑に落ちない印象をもったからなのです。こんなお話でした。
今から30年くらい前に、某一流大学医学部を優秀な成績で卒業した女性が、大学の同級生と結婚を決めたそうです。入学するのも最難関のその大学で、成績1,2位の優秀な学生カップルだったとか。男性は大変な資産家の息子で、もちろん女性もかなりのお金持ちのお嬢さんだったとのことですが、男性の実家からの結婚の条件は「仕事はしないで、家に入ること」だというのです。その理由は、医者で稼げるお金よりはるかに大きな財産の家にくるのだから、医者をする嫁は必要ない、とのこと。その女性は医者になる夢をあきらめ、卒業してすぐに結婚。以降30年以上、現在も嫁の鑑のような専業主婦生活をしているそうです。
 
皆さん、どう思われますか?玉の輿でうらやましい!でしょうか?
なんだか雲の上の話で、ぴんと来ないところではありますが、話を聞いて最初に思ったのは、「もったいないな~」というものでした。
その女性は医者になる夢にむかって、それこそ夜も寝ないで一生懸命勉強をしていたのかもしれません。医者になることは、彼女にとって「お金をたくさん稼ぐ職業」という位置付けではなかったのではないでしょうか。まあ、相手の男性がそれ以上の存在であった、ということですから幸せであるには違いないとは思いますが、社会に優秀な女医さんが一人登場しなかった、ということは残念な気がします。

お金では片付けられない、生きがいとか自己実現といったものもあると思うのです。だからこそ、前述の「働く女性の実情」で時間を有効に使いたい、健康維持をしたい、という目的で働きたい人が多くいるのではないでしょうか。 収入を得る仕事と自己実現がぴったりと合う幸福な人はそんなに多くはないかもしれませんが、そんな夢を実現する準備をすることもライフプランニングです。

お金と人生の生きがい、その両方、オリンピックを応援しつつも、ちょっと考えた週末でした。

廣澤 知子
マネックス証券 マーケティング部 マネジャー
シニア・フィナンシャル・アドバイザー