さて為替のマーケットでは、よく「行って来い相場」という言葉を使います。文字通り、市場が急落(もしくは急騰)しても収まってみれば当初の水準とさして変わらないところにあるときに使います。
例えば東京市場オープン時に相場の乱高下が始まり、それこそディーラーは食事どころかお手洗いにも行けないような状況になり、ようやくロンドン・タイムになる頃相場が落ち着いてきた(その頃にはディーラーたちはヘロヘロになっており、ディール結果の明暗もくっきり出ていたりします。負けた人は疲労と憔悴で悲惨な状況です・・・)と思ったら東京オープン時とさして変わらない相場に戻っていた・・・なんていうことはよくありました。こういったとき「行って来い相場だった」と言います。
ちなみに辞書(大辞泉)によると、「行って来い」とは、
【博打(ばくち)や相場取引などで、損得を繰り返して、結局、差引勘定に変わりがないこと。「最終レースが当たったから―だ」】
とあります。(相場と博打を一緒にすることには個人的には大いに抵抗はあります・・・)
ここでは「損得を繰り返して、結局、差引勘定に変わりがない」とされていますが、「行って来い相場」というときは相場の動きだけを捉えていることが多く、必ずしも損得ゼロというわけではありません。
前述したようにディーラーにとっては相場が動いたときが稼ぐチャンスですから、大荒れ相場のときは果敢に取引を仕掛けていることが多く、相場が結果的に行って来いでも、その間上手に相場に乗っていれば大きく稼いでいることもあります。(急落しているときにショートにし、急上昇する際には旨くロングに切り替える、ということがタイミングよくできた場合など)
またそれとは逆に相場の後追いをすることとなり、(仕掛けのタイミングがあわず)損を膨らましてしまう場合もあります。
つまり行って来い相場で差引勘定ゼロというのは、仕掛けが功を奏して儲けた後に、失敗して損をしたような場合(損をしてから取り返すこともあり)と全く動かなくて結局、損も得もなかった場合となります。
私の休暇中はまさにこの行って来い相場でした。ドル円も日本株も、まだどちらも元の水準よりはかなり円高、株安ではあるものの、ドル円が95円台になり、日本株は日経平均12000円を割り込んだところまで大きく荒れ動いたことなどまるでなかったかのようです。
長期投資をする場合、こうした荒れ相場に一喜一憂するべきでない、というのが定番ではありますが、今回のドル円に関しては、稀に見る「一喜」のチャンスといえるでしょう。
荒れ相場に一喜一憂するなというのは、相場は上がったり下がったりするもので、多くの場合「ある程度の」価格帯の中での動きであり、その場合はまた戻ってくることが多いためです。特に相場のプロではない個人投資家にとって相場の方向を読むことは大変難しいということもあります。
ところが今回のドル円相場はドル円史上において、1995年に100円割れ(このときは80円割れの最安値を記録)になったとき以来の2度目の最安値圏ともいえるところにあるわけです。ということは個人投資家にとっても、投機ではなく「長い目」で見た投資としても充分にわかりやすく、良い機会(100円割れが続く今も歴史的円高水準)と言えるわけですね。
この「長い目でみたチャンス」には、今更言うまでもなく、しっかり飛びついた個人投資家の方がたくさんいらっしゃいました。急激な円高が始まるとすぐに、売り出したばかりのゼロクーポン債(7年)が売り切れたのです。今回急遽10年債もご用意し、完売間近となっています。
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2008/news803r.htm
個人投資家の方の裾野が広がり、相場を長い目で見ながらチャンスとなると迅速に動く、という賢い行動をとられる方が増えているのは大変うれしいことです。
けっして相場の後追いはしない、チャンスとなれば迅速に行動(先を見据えて仕掛けるのもあり!)、待つべきときは待つ(これもムダのないように、なるべく有利に!)という投資行動をとれるようになりたいですね。
ムダのない投資についてはコチラ>> http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/008592.html
廣澤 知子
マネックス証券 マーケティング部 マネジャー
シニア・フィナンシャル・アドバイザー
-----------------------------------著書「金利をやさしく教えてくれる本」
http://www.monexuniv.co.jp/book/#kinri
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