クルマ作りはソフトウェア先行の時代へ

自動車業界でSDVがキーワードになりつつある。

SDV(Software Defined Vehicle)とは、ソフトウェアによって定義されるクルマのこと。クルマを制御するソフトウェアの領域が拡大したことにより、クルマ作りが従来のハードウェア先行から、ソフトウェア先行に変わりつつある中で浮上してきている。

具体的には自動車と外部との双方向通信機能を使って自動車を制御するソフトを更新し、購入後も機能を追加したり、性能を高めたりできる自動車を指す。通信を経由してクルマをリアルタイムでチェックし、故障予測、自動運転の質向上、インパネの更新、乗り心地のカスタマイズなどが想定される。自動運転も通信機能を活用することで、より安全にスムーズな運行ができるようになる。

10年後には世界の新車の3分の2がSDVに

2025年1月に米ラスベガスで開催された先端テクノロジーの見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」でもSDVに関心が集まった。CESでは半導体大手のエヌビディア[NVDA]から、トヨタ自動車(7203)が次世代のクルマにエヌビディアの先端半導体を採用することが明らかにされた。関係者によると、この先端半導体は毎秒200兆回の演算処理が可能で、旧世代品の約7倍の処理性能があるという。トヨタは車載OSの「アリーン」も手掛けており、SDVの強化を示すものとみられる。

本田技研工業(ホンダ)(7267)はCES で、2026年に市場投入予定の次世代電気自動車(EV)「Honda 0(ゼロ)」シリーズに採用する予定のビークルOS(基本ソフト)「ASIMO(アシモ)OS」の概要を発表した。ビークルOSとは車両の各機能を統合制御するOSのことで、スマートフォンに例えると「iOS」や「Android」のような役割となる。アプリを入れてバージョンアップやアップデートできる感覚だ。

電子情報技術産業協会(JEITA)は2024年12月に、2035年の車載向け半導体市場の世界需要額が2025年比で2.85倍の1594憶ドルになるとの見方を示した。SDVがけん引役。世界の新車生産台数は2035年に9,790万台で、うちSDVが6,530万台と全体の3分の2を占めると試算している。経済産業省が2024年5月に策定した「モビリティDX戦略」ではSDVのグローバル販売台数における日系メーカーのシェア3割実現を目標としている。

中長期的に、SDV分野での日本企業の貢献に期待したい。

SDV化が進む中、活躍が期待できる関連銘柄

関連銘柄をピックアップする。

本田技研工業(ホンダ)(7267)

2輪車で世界首位。4輪車でも世界大手。日産と経営統合へ。CESで次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズに採用する予定のビークルOS(基本ソフト)「ASIMO(アシモ)OSの概要を発表。ソフトウエアプラットフォームとして自動運転やADAS(先進運転支援システム)などを統合的にコントロールする役割を担う。

【図表1】本田技研工業(ホンダ)(7267):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年1月23日時点)

ルネサスエレクトロニクス(6723)

車載用マイクロコンピュータ(マイコン)で世界首位級。ホンダとSDV用の高性能SoC(システム・オン・チップ)の開発契約を締結。SoCは複数の機能を一つのチップにまとめた半導体製品のこと。「Honda 0」シリーズに搭載へ。業界トップクラスのAI(人工知能)性能、電力効率の実現を目指すとしている。

【図表2】ルネサスエレクトロニクス(6723):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年1月23日時点)

ソニーグループ(6758)

本田技研工業(ホンダ)(7267)との合弁で「ソニー・ホンダモビリティ」を展開。CESでは開発中で2025年内より正式発売するEV「AFEELA 1(アフィーラ・ワン)」のオンライン予約受付開始を発表している。40のセンサー(カメラ、LiDAR、レーダーなど)搭載で高度な自動運転実現。SDVとして異業種の知見を積極的に取り入れている。価格は8万9900ドル(約1400万円)から。日本での納車は2026年内を予定。

【図表3】ソニーグループ(6758):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年1月23日時点)

デンソー(6902)

自動車部品で国内最大手。2024年6月にNTTデータグループ(9613)とSDV分野などでのソフトウェア領域での包括提携に基本合意している。NTTデータのクラウドテクノジー領域とデンソーが取り組んできた車載ソフトウェア領域の強みを活かし、シナジーを最大化させるという。2030年までに育成も含めて両社で3,000人規模のソフトウェア開発体制の整備を目指す。

【図表4】デンソー(6902):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年1月23日時点)

イーソル(4420)

組み込み機器に特化したOS(基本ソフト)の開発・販売が主力。SDV向けOSの開発に注力。名古屋大学がSDVに重要となるAPIの策定プロジェクトとして、2024年6月に設立した「Open SDV Initiative」に参画。APIはソフトウェア同士が情報をやり取りする際に使われるインターフェースのこと。OSとプラットフォームにおける知見を活かす方針。

Open SDV Initiativeには組み込みソフトなどのヴィッツ(4440)、ソフト開発受託のクレスコ(4674)なども参加している。

【図表5】イーソル(4420):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年1月23日時点)