対立する米中構造
6月後半の中国株は、終盤にかけて上昇となりました。6月11日(金)終値から6月25日(金)終値までの騰落率は、上海総合指数が+0.5%、香港ハンセン指数が+1.5%となっています。
上海総合指数も香港ハンセン指数も6月14日(月)は端午節につき、休場だったのですが、連休明けの6月15日(火)と16日(水)あたりに大きく下落して軟調に推移していたものの、終盤に戻す形となっています。
端午節明けに大きく下げた理由は、欧米と中国の対立懸念が投資家心理の重しとなったことによります。G7や北大西洋条約機構(NATO)サミットの共同声明で、中国に対して、新彊ウイグル自治区での人権尊重や香港の高度自治が求められた他、南シナ海での措置に対して批判が表明され、これに中国政府が反発をしています。(米中対立については、その後、米連邦通信委員会(FCC)がファーウェイなど中国企業の通信機器を米国で使用禁止にする提案をしたとの報道もありました)。
また、資源価格の高騰に対し、中国政府が銅・アルミ・亜鉛などの国家備蓄を放出するとの方針から、銅価格などが急落し、資源関連が軟調となったことも調整した要因となりました。
その他、中国の経済指標もあまりよくありませんでした。中国の5月の経済指標が発表され小売売上が前年同月比12.4%増(市場予想14.0%増、前月実績17.7%増)、鉱工業生産が8.8%増(市場予想9.2%増、前月実績9.8%増)、固定資産投資が2021年初来で15.4%増(市場予想17.0%増、前月実績19.9%増)といずれも市場予想を下回ったこともマイナスでした。
さらに言えば、米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の見通しが市場予想よりもタカ派(3月時点では2023年に利上げを見込むFOMC参加者は全体の半分以下だったのに対し、今回は2023年に2回の利上げを見込むFOMC参加者が半分以上となった)となったことから米国株が軟調に推移し、それが中国株に影響したこともあります。
しかし、その後、米国株が急激に反発した上、米国で約1兆ドル(約111兆円)規模のインフラ計画が合意されるなどして最高値を更新するようになったことや、中国人民銀行(中央銀行)が公開オペによる資金供給を引き上げていることから中国株も大きく戻しています。
快手科技、しばらく決算は低迷するも目の離せない存在
さて、中国企業の2021年1-3月期の決算発表が概ね終わり、その中から面白い動きのあった企業を取り上げていきたいと思いますが、前回のコラムで取り上げた小米(01810)に続く第2弾は快手科技(01024)です。
2021年2月5日に香港市場に新規上場したばかりの短編動画プラットフォーム企業ですが、その時の時価総額は12兆円にもなり、赤字にも関わらずテンセント、アリババ、美団に次ぐ規模の巨大IT企業となっています。
スマホユーザーの主流となってきているショート動画で、中国本土にて北京字節跳動科技(バイトダンス)のアプリ「TikTok(抖音)」に次ぐ2位のシェアを持っています。バイトダンス社は未上場ですが、すでに2020年の売上高は前年比倍増の約4兆円となっています。
バイトダンスは膨大なユーザーに対して頻繁に広告を配信し、マネタイズ化で先行しています。一方、快手科技はあまりこれまで広告を打たず、まずはユーザー数や基盤を固めることを優先してきました。今後バイトダンスのようにうまくマネタイズ化を実現すれば、利益が激増する可能性もあります。
快手科技は2018年よりライブストリーミングによるeコマース事業も開始し、2020年にその総取扱高が3,812億元という規模になりました。前年比では6.4倍増という急成長ぶりです。
こちらも取扱高こそ大きいのですが、まだアリババのようにマネタイズ化までは不十分で、赤字の段階です。しかしユーザー数と規模拡大を優先しており、今後成長の可能性は大きいと思われます。潜在能力は非常に高いと見ており、安値時こそ良く内容を見て注目すべき銘柄ではないでしょうか。