金融引き締めの警戒感は後退

6月前半の中国株ですが、横ばいとなりました。5月31日(月)終値から6月11日(金)終値までの騰落率は、上海総合指数が-0.7%、香港ハンセン指数が-1.1%となっています。上海総合指数も香港ハンセン指数も小幅に下落していますが、5月下旬に上昇してきたところからの調整的な値動きと言って良いかと思います。

まず、引き続き米国株や世界の株式市場が金融緩和や財政政策拡大を背景に緩やかに上昇している背景があります。

一方、5月下旬は米中高官の協議が株価の上昇につながったわけですが、6月前半はバイデン米大統領の米紙への寄稿に対し中国外交部の汪文斌報道官が批判したことや、中国で開催されている全国人民代表大会で「反外国制裁法」が可決されて中国と欧米との対立が懸念されたことなどが重しとなりました。

その他、政策絡みでは人民銀行が外貨の預金準備率引き上げを発表したことで人民元の上昇が一段落し、海外からの資金流入が一段落したとの見方もあります。

一方、中国の経済指標はまちまちで良いものもあれば悪いものもあるという印象でした。まず、5月のCaixin(財新)中国製造業PMI(購買担当者景気指数)が52.0となり市場予想通りでしたが(市場予想52.0、前月実績51.9)、Caixin中国サービス業PMI(購買担当者景気指数)は55.1となり、こちらは市場予想を下回りました(市場予想56.2、前月実績56.3)。

また、5月の輸出は前年同月比27.9%増と市場予想の32.1%増や前月実績の32.3%増を下回ったことや輸入が51.1%増と、こちらも市場予想の53.5%増を下回ったこと(前月実績は43.1%増)があった一方で、5月の消費者物価指数は前年比1.3%増(市場予想1.6%増、前月実績0.9%増)となり、インフレが進展していないことから金融引き締めへの警戒感は後退しました。

2023年にスマホ世界一を掲げる小米科技

さて、中国企業の2021年1-3月期の決算発表が概ね終わりましたが、その中から面白い動きのあった企業を取り上げていきたいと思います。

まずは小米科技(01810)です。「スマートフォン+AIoT」戦略を進める小米科技は、2023年にスマホ世界一という野心的なグローバル目標を定めました。中国のIT業界サイトによると、2021年5月末に同社副総裁は2021年4-6月期にスマホの出荷台数でアップルを抜いて世界2位に、そして2023年にサムスンをも抜いて世界一になる目標を明らかにしました。

現状はサムスン電子がシェア28%、アップル15%、小米科技14%ですが、勢いは完全に小米科技にあり、中国及び欧州、中東、南米で大きくシェアを伸ばしているところです。インドにおいては新型コロナの影響で販売が減速しているものの、以前から同社がトップを守ってきました。直近ではチリで販売数が10倍増となるなど各地で勢いに火が付いています。

スマートフォン以外のもう1つの柱であるIoT(モノのインターネット)製品もスマートTVを柱に世界的に販売が好調です。スマートホーム関連製品やウェアラブル端末も売れており、海外市場は直近で大きく伸びています。

これら2つのセグメントで販売する製品からつながる顧客を同社のインターネットサービスに繋げることで、利益率の高い広告、ゲーム、サブスクリプション(動画配信など)、eコマース、フィンテックサービスへと誘導するのが同社の掲げる「スマートフォン+AIoT」戦略です。

これが現在ハードウェア製品の販売好調と相まってうまくいっており、ハードとソフトが互いに作用し合って全体の業績、利益率を押し上げているところです。このように小米科技はグローバルシェアを狙っており、成功の芽が出ている中国企業は他にないため、中長期の大きな成長に注目したいところです。