「テスラ大相場」が続く暗号資産

暗号資産の下落が続いている。代表格のビットコイン(BTC)/米ドルは一時3万米ドルまで一段安となり、4月に記録した最高値から、すでに最大で5割もの暴落となった。では、この先の行方はどうなるのか、そして為替へはどのように影響するかについて、今回は考えてみたい。

BTC/米ドルは、年明けから暴落したが、1月末に反発に急転換となった。すると、その後は約2ヶ月半で倍増。しかし、4月に頭打ちになると、5月に入り暴落した(図表1参照)。

【図表1】BTC/米ドルと90日MA (2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

このようなBTC/米ドルの基調転換のタイミングは、よく知られているように米電気自動車(EV)大手、テスラ社のCEO(最高経営責任者)であり、現在の世界を代表する経済人、そして世界屈指の富豪として知られイーロン・マスク氏の言動との関係性が強かった(図表2参照)。その意味では、歴史的な大乱高下相場となっているBTC/米ドルは、「テスラ大相場」と言ってもいいかもしれない。

【図表2】BTCに関するイーロン・マスク氏のおもな話題
出所:各種報道をもとにマネックス証券が作成

1月末、イーロン・マスク氏の発信をきっかけに反発に転じたBTC、しかし5月に入り、今度はマスク氏の発信をきっかけに暴落となっているBTC。では、BTC下落はどこまで進むのか。

2017年以降で見ると、BTC/米ドルの下落が本格化した局面では、3回、90日MAからのかい離率はマイナス50%近くまで拡大した(図表3参照)。参考とする例が少ないものの、これまでのBTC/米ドルの実績を見る限り、下落が本格化した場合、90日MAから5割以上に下落する可能性は考えづらかったが、5割近く下回るまで下落するリスクはあったわけだ。

【図表3】BTC/米ドルの90日MAからのかい離率 (2017年7月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ところで、90日MAを5割近く下回るまでBTC/米ドルが本格的に下落したこれまでの3回において、米ドル/円はどんな動きだったか。具体的には、2018年初め、2018年末、そして2020年3月だったが、この3回では基本的に米ドル安・円高となっていた(図表4参照)。

【図表4】米ドル/円の推移 (2017年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これは、暗号資産の暴落は、株安などリスクオフを招き、その面から円高になったということではないか。以上のように考えると、この先暗号資産が一段と下落するかは、株や為替の行方にとっても重要な意味を持つ可能性がある。