中国では金融引き締めへの警戒感が膨らむ
5月上旬の中国株ですが、中国本土市場は横ばい基調、香港市場は調整基調が継続しています。
4月末の終値から5月14日までの終値の騰落率は、上海総合指数が+1.3%、香港ハンセン指数も-2.4%となっています。上海市場はプラスとなっていますが、これは5月14日に前日比+1.8%という大きな上昇があったことによるもので、前日の5月13日まではマイナス圏の推移が多い状態でした。
相場が軟調気味に推移している理由は、引き続き中国当局の金融引き締めを懸念してのものです。中国当局は主要国の中では珍しく、コロナ制圧後には金融引き締めに動くとコメントしており、これが欧米との株価推移の差につながっています。
直近でも中国人民銀行(中央銀行)は2021年第1四半期の報告で「経済回復とリスク防止の関係を適切に処理する」などと言及したため、金融引き締めへの警戒感が膨らんでいます。
加えて言えば、米国では消費者物価指数(CPI)が上昇しており、インフレ懸念が出ていることもあります。米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレの進行は一時的としていますが、銅などの商品価格の上昇は続いており、世界的に徐々に消費者物価指数が上昇してくる可能性もあります。
一方、アリババ(09988)や美団(03690)、テンセント(00700)などの株価が軟調なことも香港市場の重しとなっています。米国のナスダックやグロース株が全般的に調整していることも影響していますが、5月も上海市当局が5月10日に美団(03690)に事業の見直しと、市場支配的地位の濫用是正を命じたことを明らかにしたように、中国当局による管理強化の流れは続いています。
さらに言えば、アリババ(09988)が発表した2021年1-3月期決算が市場予想よりも悪かったことも重しとなっています。2021年1-3月期決算は売上が63.9%増の1,874億元、純損益が55億元の赤字と上場来初の赤字となっています。
もっとも売上は大きく伸びていますし、赤字になった理由は独占禁止法違反に伴う制裁金182億元やアント・グループの株式報酬費用161億元が原因ですので、深刻なものではありません。
セルインメイ(Sell in May)期間は軟調な推移が続く可能性も
ここで中国の経済指標を確認しておくと、4月のCaixin中国製造業PMIは51.9と、市場予想の50.9や前月実績の50.6を上回りました。また、Caixin中国サービス業PMIも56.3と市場予想の54.2や前月実績の54.3を大きく超え、2020年12月以来の高水準になっています。
4月の輸出量も32.3%増と、市場予想の24.1%増や前月実績の30.6%増を上回っています。一方、4月の消費者物価指数は前年比0.9%増と、市場予想の1.0%増を下回って落ち着いています。景気回復は続いていますが、米国ほどの景気刺激策や金融緩和策が採られていないことから、インフレは落ち着いているという、株式市場にとっては良い状態と言えるでしょう。
今後の相場の見通しですが、中長期的には強気のままで良いと見ています。米国を中心としたコロナワクチンの普及と、世界的な金融緩和、そして財政投資拡大は続くと見ているからです。
先ほど述べたように、中国は金融引き締めの可能性を早々に打ち出していますが、世界的な株高となれば、最終的には中国株にも割安感が出て上昇していくと思います。もちろんインフレの状況や各国の中央銀行の方針については見ていく必要がありますが、下がったところは優良銘柄の買い好機という見方が良いのではないかと思います。
ただ、短期的には5~10月の6ヶ月間は株価が軟調になりやすい時期ですので、株価は軟調基調が続く可能性もあります。したがって、急いで拾うというよりは、下がったところでじっくりと買い場を探っていく方針で良いと思います。