米ドル/円の特殊な事情

先週は米ドル全面高となる中で、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルといった主要なドルストレート(対米ドルでの外貨の取引)は軒並みこの間の安値(米ドル高値)を更新した。これは、米金利上昇に伴う米ドル買いの結果といった理解が基本だろう。ただ根底にあるのは、米ドルの「売られ過ぎ」により、買い戻しが入りやすく、その結果米ドル買い材料に反応しやすいということではないか(図表参照)。

【図表】CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(2017年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

2020年まで、「リスクオフの米ドル買い」といった言葉もよく聞かれた。これは、2020年3月の「コロナ・ショック」と呼ばれた世界的な株大暴落が一段落した後から続いた株高・米ドル安、「リスクオンの米ドル売り」の反動だっただろう。この「リスクオンの米ドル売り」が長く続いた結果、上述のように米ドルは「売られ過ぎ」懸念が拡大した。この結果、売り材料より株安や米金利上昇といった買い材料に過敏に反応するという構図になっているのではないか。

この点、少し事情が異なるのが米ドル/円かもしれない。米ドル/円は、2020年の「コロナ後」にNYダウが1割程度と比較的大きく下落した局面では米ドル安・円高となった。つまりユーロ/米ドルなどのほかのドルストレートと異なり、米ドル/円は株安で米ドル安となる可能性もあった。これは比較的よく知られているように、「リスクオフの円買い」が影響したということではないか。

以上を整理してみよう。米ドル「売られ過ぎ」懸念が強い中で、米ドル買い戻しが入りやすい。このため、株安や米金利上昇といった米ドル買い材料により大きく反応しやすい。ただ米ドル/円だけは、これまでの実績を見ると株安で円買い(米ドル売り)といった反応となる可能性もある。

このようにまとめてみると、米ドル買いがワークしやすい状況が続く中では、米ドル/円以外のドルストレート、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルなどでの米ドル買い戦略が機能しやすいといった考え方もあるのではないか。