◆【指呼の間(読み方:しこのかん)】指差して呼べば答えが返って来る程度の距離のこと。「指呼」は指さして呼ぶこと。「指呼の中(しこのうち)」とも言う。比喩的に「目前である」「すぐそこである」という意味でも用いられる。(出典:実用日本語表現辞典)
◆日経平均3万円は指呼の間である。最近ではこうした表現を見なくなった。理由は2つある。ひとつは証券関係者も世代交代で、こんな古臭い言葉を使う僕みたいな年寄りが少なくなったこと。もうひとつは意味のある大台更新が久しくなかったからだ。確かに日経平均は昨年秋からの推移を見ても、2万4千円、2万5千円、6千、7千と次々に台替わりを果たしてきた。ただ、そうした千円幅の刻みでは、大台更新というには迫力不足であったから、「指呼の間」などという大袈裟な言葉は出番がなかったのだろう。
◆だが、3万円なら話は別だ。そこから上は事実上の真空地帯。戻り待ちの売りなど出てこない。仮に30年間保有し続けた塩漬け株が買値に戻ったとする。それで「やれやれ」の売りを出すだろうか。そんな株はもはやお宝だ。古漬けのいい味が出ている。30年物のスコッチウィスキーみたいなものだ。僕は日経平均が3万円になったらバランタイン30年の封を切ろうと待っている。日本株だけに山崎の30年にしようか。
◆いやいや、そんなふうに浮かれてばかりでは足元をすくわれかねない。好調の時こそ気を引き締めて、リスクを点検するべきだ。「指呼」はもうひとつよく使われる言葉がある。「指差し呼称」だ。信号、標識、計器を指差して、その名称と状態を声に出してチェックする安全確認・危険予知の行動である。株式投資でも実践したい。株式投資における信号、標識、計器と言えばバリュエーション指標だ。「PER、よし!」「イールドスプレッドよし!」…ん?…本当に「よし」か!?