今回は11月10日付の記事で「この10年でテンバガー(10倍株)になっている会社」としてご紹介した光通信(9435)について、さらに詳しく見ていきたいと思います。

2000年初頭のITバブル期にソフトバンクグループ(9984)と並ぶ代表銘柄であった光通信は当時、携帯電話販売店の運営のほか、インターネット関連企業を子会社化していることなどで注目を集めていました。

業績拡大に伴い株価上昇

しかし、ITバブル崩壊後、光通信の株価は低迷します。旧ライブドアに注目が集まった2005年頃には一時10,000円程度まで株価が回復するものの、その後は再び低迷。リーマンショック後には1,000円台前半まで株価が下がりました。

その後、株価は回復し、アベノミクスが開始された2013年には5,000円の節目を抜け、2016年末のトランプ相場で10,000円、2018年には20,000円を超え、2019年末には28,180円と30,000円目前まで株価が回復しているのです。新型コロナウイルス感染拡大もあり、2020年4月には15,000円台に急落するものの、直近では25,820円、時価総額は1.2兆円に達しています。

この株価上昇は業績拡大に伴うものです。リーマンショック後、もっとも業績が落ち込んだときには26億円(2011年3月期)だった営業利益が、2013年3月期には246億円、2016年3月期に377億円、2019年3月期に643億円、直近の2020年3月期には730億円と、アベノミクスやトランプ相場といったマーケット要因だけではない成長を見せています。

2020年度も第1四半期(4月-6月)こそ非常事態宣言下だったこともあり減益でしたが、中間期(4月-9月)には増益に転じており、収益力の強さを感じさせます。

光通信の業績の強みはどこにあるのか

では、その光通信の業績の強みはどこにあるのでしょうか。11月10日付の記事で同社傘下のプレミアムウォーターホールディングス(2588)が好調だという話をしました。光通信はグループとして、中小企業・個人への強力な販路とニーズ察知力を持っており、その営業力を様々な商材に活用し、好業績につなげているのです。

それに加えて、同社がマーケットをうまく活かしている点にも注目が必要でしょう。上記のプレミアムウォーターも光通信が上場していた水販売会社を公開買付したと上述の記事でご説明しました。光通信はこの他にも上場企業に幅広く投資しており、携帯電話販売会社でいうと、ティーガイア(3738)、ベルパーク(9441)が持分法適用会社になっており、コネクシオ(9422)、日本テレホン(9425)にも投資しているようです。光通信は自社で携帯電話販売事業を行っており、これらの会社の経営状態をよく分析できるのでしょうし、自社とのシナジーが図れると考えているのではないでしょうか。

同じく中小企業向けのビジネスを展開する会社への投資も積極的です。フォーバル(8275)、エフティグループ(2763)といった中小企業向けに通信機を販売する会社も保有しています。かつては電話機販売がメインだったこれらの会社はデジタル化が進む中で、様々な法人向けウェブサービスの代理店になっています。さらなるデジタル化が報じられるなか、このようなコンサルティング業務へのニーズも高まりそうです。他にも保険販売業、賃貸住宅へのサービスや家賃収納代行業などに投資しています。

これらの会社の共通項は光通信自身が強みとする顧客基盤を抱え、それらの顧客から長期的に収益を上げられるということでしょう。光通信はこのような長期的な収益力のある会社に株価が割安な段階から戦略的に投資しているように見えます。

光通信が投資する注目の会社

同社の最近の投資先の中で特に注目されるのは冷蔵ショーケースなどを主力とする中野冷機(6411)でしょう。同社は1986年に上場している会社ですが、リーマンショックの頃も黒字を確保するなど業績が安定しており、2011年以降は毎期20億円以上の営業利益を継続しています。光通信は2018年9月に「長期保有を目的とした純投資」として同社の大量保有報告書を提出し、その後、2018年11月には筆頭株主になっています。

中野冷機はもともと光通信が筆頭株主となる前から配当方針を変更するなど、企業価値向上に取り組んでいました。2016年12月期に45円だった配当を2017年12月期に100円と増配し、さらに光通信が筆頭株主となった後の2018年12月期には312円とし、2019年12月期も300円、2020年12月期も300円を予定しています。

中野冷機が増配を続ける中で光通信は株式を買い増していたので、光通信もこのような姿勢に前向きであることは間違いなさそうです。中野冷機の株価も2019年12月には高値をつけており、その後は低迷しているものの、2020年3月の暴落局面でも比較的安定していました。

会社の価値をよく分析し、実際に投資、公開買付なども行う光通信はその投資先にも注目できそうです。同社を含め、5%以上の株式投資を行ったものは大量保有報告書を提出する必要があります。光通信が最近提出した大量保有報告書を見てみると、三機サービス(6044)、カイノス(4556)、アートネイチャー(7823)、パチンコメーカーのSANKYO(6417)などに投資しているようです。これらはEDINETの書類検索で大量保有報告書を提出者「光通信」として検索すると、常に新しいものを確認することができます。光通信の投資先が気になる方は、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。