ストラテジックキャピタルが京阪神ビルディングにTOB

11月4日、アクティビストファンドであるストラテジックキャピタルが不動産中堅の京阪神ビルディング(8818)に公開買付を発表しました。ストラテジックキャピタルはもともと京阪神ビルディング株に投資していますが、その持ち分を引き上げようというものです。公開買付価格は1,900円で、発表日終値の1,879円を上回りましたが、翌11月5日には終値で2,138円と13.8%も値上がりしたため、公開買付への応募は少ないかもしれません。

※ストラテジックキャピタルがどのような投資を行っているか、京阪神ビルディングに対してどのような姿勢かについては過去に掲載した以下の記事をご覧ください。
ストラテジックキャピタルは投資先に何を提案したか?
アクティビスト「ストラテジックキャピタル」は投資先に何を求める?

※公開買付への対応方法については以下の記事をご覧ください。
NTTドコモ、キリン堂HD、ニチイ学館の株価推移でみる「公開買付時の対応方法」

※今回の京阪神ビルディングの公開買付はマネックス証券からもお申し込みいただけます。詳しくはこちらをご覧ください。

ITバブル時に一世を風靡したあの会社がテンバガーに

ストラテジックキャピタルの投資先の多くは割安な中小型株と言えそうです。同様に割安な中小型株に投資を進めている、今、注目の会社があります。その会社はストラテジックキャピタルの投資先である世紀東急工業(1898)にも投資しており、その他の中小型株に幅広く投資しています。しかも、自社で強力な販売力を持ち、ストック収益で着実に成長しています。果たしてその会社はどこでしょうか?

その答えは、かつてITバブルの際に一世を風靡した光通信(9435)です。10年前に2,000円以下だった光通信の株価は今や25,000円になっています。この10年で立派にテンバガー(10倍株)となっています。株価だけではありません。2012年決算から2020年決算まで9期連続営業増益、2011年3月期の営業利益26億円は2020年3月期には730億円まで成長しているのです。

ITバブルの頃、携帯電話の販売代理店としてソフトバンクグループ(SBG)(9984)と並んでもてはやされた同社でしたが、その後はSBGに比べると、あまり目立つ存在と言えないでしょう。しかし、ここ10年の株価を見ると、SBGがせいぜい5倍強なのに対し、同社はそれを大きく上回るパフォーマンスを出しているのです。

同社の基本的なビジネスモデルは代理店を通じ、主に中小の法人顧客に様々な商材を売り込むことです。その販売力と顧客のニーズ把握力が同社の最大の強みで、強力な営業力を誇っています。その強みを様々な商材に活かしていることが、前述の業績につながっています。2020年の同社の注目商材は「水」でした。

同社傘下のウォーターサーバーなどで水販売を手掛けるプレミアムウォーターホールディングス(2588)は外出が難しい環境や在宅時間の拡大を背景に2020年の営業利益は前年比倍増ペースを続けており、そのペースが加速しています。株価も好調で2019年末に1,768円だった株価は直近で4,245円と2.5倍近くなっています。この環境下で顧客のニーズを把握し、着実に新規顧客を開拓し、継続的な収益に結びつけていると言えるでしょう。

光通信は2016年に現在のプレミアムウォーターにあたる水販売会社を公開買付し、子会社の水販売会社と合併させています。子会社はもともと営業力を誇っていました。当時、光通信が提示した公開買付価格は513円ですから、4年ほどで8倍近くなっているのです。有望で割安な会社に資本参加し、自社の経営資源も注入して成長させています。そのことからも、光通信は実行力も伴ったアクティビストであると言えるでしょう。しかも上場会社に幅広く投資しており、さながら1つのアクティビストファンドです。次回以降は光通信の投資先を見ていきたいと思います。