「コロナ禍」という言葉の通り新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの社会に大きな厄災をもたらしました。

一方で、コロナ禍が起きたからこそ、同じことを繰り返してはいけないとアクションをとることで避けられることや、結果的に30年後、50年後に「コロナ禍があったからこそ良くなった」と思えることも少なくないかもしれません。

いわゆる気候変動リスクも、その1つかもしれません。

気候変動による災害の増加傾向

気候変動リスクは、20世紀頃から地球温暖化のリスクの1つとして長らく語られてきました。

【図1】世界の平均気温の推移
出所:Berkeley Earth

世界の海面は1900年からの100年間で1.5メートルほど上がり、21世紀に入ってからは洪水の若干の増加が見てとれます。

地球温暖化、海面の上昇という問題はご存じの方も多いのではないでしょうか。

【図表2】海面の高さ
出所:climate.nasa.gov

身近なところでは、日本でもここ数年で、関西、関東の2大都市圏でどちらも数十年に一度といわれるような大雨を経験し、河川の氾濫などの被害も実際に出ています。

Prevention Webのデータによると、1970年代以降この50年間、気候関連の自然災害、水害、風水害は増加トレンドをたどっています。

不十分だった感染症への危機対応策

上記のリスクは、ほとんどの方がすでにご存じだと思います。

一方で、筆者を含めた私たちは、大きな危機と言えば、経済だとリーマンショック、世界恐慌、ITバブルの崩壊、1980年代のラテンアメリカの債務危機などがまた起きないかと警戒し、社会だと第三次世界大戦や核戦争は起きてはいけないと警戒するのが一般的だったと思います。

今回のようなことが起きるリスクは専門家が事前に指摘しており、2015年にビル・ゲイツ氏がTED Talksで次の感染症のアウトブレイクを警告したり、2011年に上映された映画「コンテイジョン」では今年の世界の状況と非常によく似た様子が描かれています。しかし、上記への対応策は世界中で十分になされていませんでした。

私たちは20世紀に社会・経済で起きた惨事を防止するリスク・ヘッジ策を積み上げてきましたが、21世紀型の危機対応策の構築はまだ始まったばかりと言えます。

21世紀型リスクの事例

21世紀型リスク、気候変動リスクの1つの例として、食料安全保障があげられます。

20世紀型の経済リスクである債務の管理は、よく知られており、先進国についても新興国についても債務危機への警鐘はやみません。

確かにリスクはあるものの、その管理手法も発達してきています。債務の額が増え続けていますが、経済も成長しており、世界の債務の水準は、中国の民間債務を除くと対GDP比ではそれほど伸びているわけでもありません(コロナ禍前)。

これによく似ているのが食料の安全保障です。

世界の食料生産量は年々伸びていますが、1980年代後半以降、その伸び率はほとんど世界の人口の増加率と同じと言われています。

つまり、より大きな経済のもとより大きな規模の債務を管理しているのと同様に、より大きな人口のもと、年々より大きな農業生産の管理がなされているのです。

【図表3】世界の穀物の産出率と人口増加率の推移
出所:FAOSTATのデータをもとにMarisha Sharmaら作成

このことは債務危機と同様、何かあったときの衝撃もより大きなものになる可能性があることを示しています。(食料安全保障は、主にアフリカ諸国のリスクの高さが指摘されています。)

また、現在はそれほど実感がないですが、穀物の生産は、2030年以降から本格的に産出率が下がりはじめるというシミュレーションもなされています。

コロナ禍で私たちは、このようなシミュレーションはオオカミ少年ではなく、単純に確率論的に実現してしまうものということを学びました。

今後、ウィズコロナ、アフターコロナ下において、このような気候変動リスク防止や食料安全保障に資するような銘柄への投資が期待できるかもしれません。