金利差と原油相場に注目

【豪ドル/米ドル】

2021年の豪ドル/米ドルは、3月に0.80米ドルで頭打ちになると、その後は下落トレンドが展開した。そんな豪ドル安・米ドル高の動きは、米ドル/円やユーロ/米ドルと同様に、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の後からは、基本的に金融政策を反映する豪米2年債利回り差と連動する展開となった(図表1参照)。

【図表1】豪ドル/米ドルと豪米2年債利回り差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ただ、10月頃から、豪ドル/米ドルは金利差からのかい離が目立ってきた。10月以降、豪米2年債利回り差は豪ドル劣位拡大に向かったが、それを尻目に一時豪ドル高・米ドル安へ向かうところとなった。この金利差からのかい離が目立つようになった10月以降の豪ドル/米ドルの動きを比較的うまく説明できそうなのがWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)など原油相場だった(図表2参照)。

【図表2】豪ドル/米ドルとWTI (2021年6月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

もともと代表的な資源国通貨とされる豪ドルだけに、原油相場とは一定の相関関係があったものの、10月以降改めて相関性が高まったのは、米国のインフレ懸念が現実味を増してきたことで、金利以上に「モノ」の影響が強くなったといったこともあったのかもしれない。

その意味では、インフレが注目を集める状況が続く中においては、資源国通貨の豪ドルの行方を考える上で原油相場などの影響は重要になりそうだ。その原油相場は、11月にかけて上昇傾向が続いたが、11月下旬にコロナ変異「オミクロン株」への懸念が浮上したことをきっかけに一転して急落となった。

WTIの5年MA(移動平均線)からのかい離率は、2010年以降では最高のプラスかい離率に拡大していた(図表3参照)。要するに、2010年以降では、中長期的な原油相場の「上げり過ぎ」懸念が最も強くなっていたということだ。「オミクロン株」をきっかけとした原油相場の急落は、その反動が入ったことが大きかったのではないか。

【図表3】WTIの5年MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

環境擁護に対する時代的な要請が強い中で、原油相場は長期的な供給不足への懸念などから上昇しやすい構図は大きく変わらないと考えられる。ただそういった中で、ここまで原油相場の上昇が続いた結果、既にかなり中長期的な高値限界圏に達している可能性があることを示したのが、今回の原油相場「オミクロン・ショック」だったとも言えるかもしれない。

さて、話を豪ドルに戻そう。豪ドル/米ドルは、11月にかけて原油相場に連れる形で上昇したものの、52週MAの位置する0.75米ドルを大きく上回らずに反落に転じた(図表4参照)。経験的には、トレンドと逆行する一時的な動きは52週MAまでがせいぜいなので、その意味ではこの値動きは豪ドル安・米ドル高トレンドが続いていることを確認したものと言えそうだ。

【図表4】豪ドル/米ドルと52週MA (2005年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

豪ドル安・米ドル高トレンドが展開する場合は、52週MAを10~15%下回るまで続くことが多かった(図表5参照)。足元の52週MAは0.75米ドル程度なので、それを10~15%下回るなら0.63~0.67米ドルまで豪ドル安・米ドル高が続く可能性は注目したい。

【図表5】豪ドル/米ドルの52週MAからのかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ところで、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の豪ドル・ポジションは、過去最大規模の売り越しとなっている(図表6参照)。要するに豪ドルは、「売られ過ぎ」懸念がかなり強くなっている。金利差や原油相場の動向が豪ドル高を示唆するケースでは、「売られ過ぎ」の反動から豪ドル買い戻しが強まる可能性には注意が必要だろう。

【図表6】CFTC統計の投機筋の豪ドル・ポジション (2012年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

【豪ドル/円】

豪ドルは対円、対米ドルともに2020年3月「コロナ・ショック」の後から上昇トレンドが続いてきた。豪ドル/米ドルは2021年7月頃から52週MAを大きく下回り、下落トレンドへの転換となったが、豪ドル/円はまさに足元で82円程度の52週MAを大きく下回り始めており、下落トレンドへ転換の正念場を迎えている(図表7参照)。

【図表7】豪ドル/円と52週MA (2008年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

かりに、豪ドル/円も下落トレンドへ転換したとなると、高値は52週MA前後までがせいぜいとなるので、2022年の予想レンジは75~82円中心といったところになる。