「ナスダック総合は10,000ポイントの大台に乗せ史上最高値を更新した。日経平均も2万3000円の大台を回復、ほぼ<コロナ前>に戻ったと言える。急速な株高基調が強まるなかで、先行きについては見方が分かれつつあるがそれは当然だろう。ただ、今後相場が下がるという慎重派の中には、今の市場は実体経済と乖離しているバブルだからいずれ下がるはず - つまり市場が間違っているから下がるだろう、という見方するものがいるが、その考えこそ間違っている。市場は常に正しい。これが市場に関わるものにとっての金科玉条である。相場が今後下がるとしても、それはその時の状況に反応して下がるのであって、いま市場がつけている価格が間違っているから下がるのではない。」
この文章は今週あるメディアに寄稿したものである。そんな折、昨日の日経平均の大幅安に続いて米国市場でもダウ平均が前日比1,861ドル安と再び急落した。相場の行き過ぎを指摘していたものの中には「それ見たことか」と言い出す輩がいないとも限らないが、改めて申し上げる。今回の急落はコロナ第二波への警戒感の台頭が背景である。つまり前段の文章に照らせば、コロナ第二波への警戒感が台頭したから下げたのであって、これまでの上昇がバブルであり、それがはじけて下がったわけではない。
ナスダック総合が10,000ポイントの大台に乗せ史上最高値を更新したことも、日経平均が2万3000円の大台を回復したことも紛れもない事実で、夢幻であったわけではない。そこに至る経緯で相場を見誤れば得べかりし利益を失うということだ。ジョージ・ソロスの右腕だったスタンレー・ドラッケンミラー氏は自分の弱気見通しが間違いだったと認めた。一流の投資家は謙虚である。
昨日の米国市場ではコロナ第二波のリスクが強く意識されたようだ。経済再開に伴って全米各地で感染者数が再び増加との報道が相次いだ。しかし、これはある程度、予想されたことではなかったか。
米疾病対策センターのロバート・レッドフィールド所長は4月下旬の段階で、米国内で新型コロナウイルスの第二波が発生すれば、インフルエンザの流行初期と重なる可能性があり、今回よりもさらに甚大な被害をもたらす恐れがあると警告していた。そのインタビューを載せたワシントン・ポストの記事が改めて多くのひとに読まれたという。
過去に何度も述べてきたが、「リスクは定義できれば危険ではなくなる」。コロナの第一波は、まったく無防備だったところに襲い掛かったが、第二波では備えはできているので、少なくとも言えることは「第一波と同じ展開にはならない」ということだ。そして、なによりも「何があっても株価は戻る」という事実をまざまざと見せつけられた直後である。と、考えれば下がったところは買いと考えるのが当然の帰結だろう。ドラッケンミラー氏も今回は押し目買いに動くのではないか。