直近の価格動向
J-REIT価格は5月になっても値動きが荒い状態が続いているが、上昇基調に転じていると考えられる。東証REIT指数は、5月8日に終値ベースとしては2ヶ月ぶりに1,600ポイント台を回復、翌営業日の11日には1,680ポイントまで上昇した。その後は1,550ポイント程度まで反落したが20日には1,610ポイントまで反騰した。
東証REIT指数の上昇は、物流系や住居系銘柄により牽引されている状態が4月から続いている。端的な事例としては、日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283、以下NPR)の時価総額が5月20日にJ-REIT市場で2番目となったことが挙げられる。
J-REITの時価総額は、これまで日本ビルファンド投資法人(証券コード8951、以下NBF)が第1位、ジャパンリアルエステイト投資法人(証券コード8952)が第2位という状態が市場開設以来続いてきた。5月20日に初めてこの序列が崩れたことになる。
物流系銘柄はコロナ禍でも収益減少リスクが低い
利回り面で見ても、5月20日時点で利回りが低い(投資家の評価が高い)10銘柄の内訳(※)は、物流特化型が5銘柄、住居特化型が3銘柄と大半を占めている。住居系銘柄は、テナント分散効果が高いこともあり比較的借入金比率が高い銘柄が多い。したがって、コロナ禍が金融機関に大きな悪影響を及ぼし、J-REITに対する融資姿勢が変化する可能性まで考慮する投資家であれば、利回り面での魅力は少ない状態と言えるだろう。
一方、物流系銘柄は住居ほどテナント分散効果が高くないため、借入金比率が低い銘柄が大半だ。つまり金融機関の状況が変化しても、受ける影響が最も少ない状態なのが物流系銘柄といえる。コロナ禍がEコマースを促進する可能性も視野に入れれば、収益面での死角がない用途と考えられる。
投資上の注意点と投資タイミング
したがって、投資を考慮する上で注意すべき点は2点に絞られる。1点目はこれまでの連載でも述べてきたように、物流特化銘柄の大半が利益超過分配を行っている点だ。物流特化銘柄では日本ロジスティクスファンド投資法人(証券コード8967)以外、全ての銘柄の分配金には利益超過分配金が含まれている。
例えば、NPRの次期(2020年11月期)の予想分配金は4,760円であるが、この中には利益超過分配金640円が含まれている。NPRの利回りは5月20日の終値308,500円を基準に次期分配金ベースで算出すると3.1%程度になるが、利益超過分配金を除外すると2.7%程度となる。
住居系銘柄の大半は利益超過分配を行っていないため、利回り面では同様に見える銘柄もあるが、利益ベースの利回りで比較すれば物流特化銘柄は極めて低い状態になっているということになる。
2点目は、価格が堅調であるため増資による需給悪化で価格が下落する可能性がある点だ。物流特化型銘柄は2018年に価格が軟調に推移していたが、これは相次いで物流特化型銘柄が増資を行ったためだ。
現在のJ-REIT市場は全体として投資家の需要が高い状態とは言えないため、増資を行えば物流系銘柄であっても価格が一時的に下落する可能性が考えられる。利回り面が前述の通り低くなっている点も考慮すれば、増資で価格が下落した時が個人投資家にとっては数少ない投資可能な時期とも言えるだろう。
(※)利回り面の最も低い銘柄はインヴィンシブル投資法人(証券コード8963)であるが、当期業績予想が98%減配という特殊要因があるため除外している