4月上旬の中国株は緩やかな回復基調に

前回のコラムにて「3月後半の中国株は急落となりましたが、チャート的には一旦の底打ちの様相もみせて」いると述べた香港ハンセン指数ですが、その後、4月上旬も緩やかな回復基調が続いています。

その背景ですが、欧州や米国における新型コロナウイルスの感染拡大のピークアウト期待からの欧米株の上昇や中国の預金準備率引き下げ(13.0%から12.5%に引き下げ)、中小企業支援策などの金融政策・財政政策が強い株価推移に繋がっている印象です。

株価と売買代金のリズムを見ても、たとえば、4月7日(火)の株価上昇時には前日よりも大きく売買代金を伸ばして上昇し、逆に翌8日(水)のような下落時は前日よりも売買代金を大きく下げて下落し、さらに翌9日(木)は前日よりも売買代金を上げて上昇といったように非常に良い組み合わせでの推移が続いています。

経済指標を見てみると、3月のCaixin中国製造業購買担当者景気指数は50.1となり、2月実績の40.3や市場予想の45.0を上回り、景況感の境目である50も上回る結果となりました。Caixin中国サービス部門購買担当者景気指数は景況感の境目である50を超えられなかったものの、それでも43.0と、2月実績の26.5や市場予想の39.0を上回る結果でした。

また、4月10日に発表された3月の新規人民元建て融資は2兆8500億元となり、2月実績の9057億元や市場予想の1兆8000億元を大きく上回り、経済の底割れを防ぐために大量の資金供給が行われていることが示唆されています。そして、中国自動車工業協会が発表した3月の新車販売台数は前年同月比43.3%減の143万台だったものの、2月に記録した79.1%減の悪化からは減少幅を大きく縮めています。

中国は世界に先駆けて新型コロナウイルスの感染拡大が起こってピークアウトしたわけですが、その分世界に先駆けて景気回復の芽が出てきている状態となっており、再度の感染拡大などがなければ、緩やかな景気回復が続くと期待できそうです。

優良銘柄の株価には割安感も

中国企業は3月下旬に2019年度の通期決算を発表しています。2019年は新型コロナウイルスの影響もなかったため、好業績を発表している企業がいくつもあります。たとえば、テンセント(00700)の第4四半期(2019年10-12月期)の業績は売上が31%増、純利益が52%増と大幅な増収増益となっています。

ネット企業以外でも、スマホや車載向けのレンズなどを製造する舜宇光学科技(02382)の下半期の売上は60%増、純利益は103%増。安踏体育用品(02020)の2019年度通期決算は売上が41%増、純利益が30%増とこちらも大幅増収増益となっています。

他にも薬明生物(02269)の19年度下半期の業績は売上が61%増、純利益が48%増、ニューオリエンタルエデュケーション(EDU)の20年5月期第2四半期(9-11月)決算の業績は売上が32%増、Non-GAAP会計準拠による費用調整後の利益が148%増となるなど、挙げていくとこのような大幅増収増益の銘柄は複数あります。

もちろん、発表された2019年度の決算は良かったものの、2020年度上半期の業績は多くの企業が新型コロナウイルスの影響をかなり受ける見通しです。しかし、その分、株価は通常よりも割安な水準になっています。そして、前述のように世界に先駆けて新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトしている中国は既に景気回復の芽が出始めている状況と考えられます。

もちろん、欧米がまだピークアウトしていないことから考えても、海外からの需要が回復するまでにはまだ時間がかかり、それに対する中国の輸出も回復するまでには時間がかかるでしょうから、中国経済や企業業績もすぐにはV字回復というわけにはいかないでしょう。

しかし、中国当局の金融緩和と財政投資拡大によって、緩やかな回復基調は続くと見て良いと思います。そのように考えれば、業績の良い優良銘柄については、購入を検討しても良いのではないかとも考えます。