このレポートのまとめ
1.新規失業保険申請件数は664.8万件
2.ロックダウンの現状と解除のシナリオ
3.新型コロナウイルスの抑え込みに時間を喰うとリスクが高まる
4.健康の危機が金融危機に発展するリスクも残っている
新規失業保険申請件数が先週発表の改定値よりさらに大幅に悪化し664.8万件に激増
4月2日(木)に発表された米国の新規失業保険申請件数は664.8万件でした。これは先週の330.7万件(改訂値)よりさらに酷い数字でした。
ロックダウンの現状と解除のシナリオ
ロックダウン(外出禁止令)
今、アメリカの約30州でロックダウン(外出禁止令)が出されています。これはアメリカの人口の約80%をカバーする地域です。
ロックダウンが宣言されるとレストランはドライブスルーを除いて営業できなくなりますし、劇場、映画館、スポーツ・イベント、コンサート、見本市、百貨店、小売店などもすべて閉まります。営業して良いのは薬局、食料品店程度です。
するとこれらのビジネスに従事するウエイトレス、バーテンダー、清掃員、売り子などはロックダウンが解除されるまで自宅で待機しなければいけません。
これは別に解雇を言い渡されるわけではないけれど…時間給を貰っているそれらのワーカーはとつぜん収入が途絶えてしまうのです。
アメリカのルールでは、そういう一時的に収入が途絶えた人は会社から「お前はクビだ!」と言い渡されていなくても失業保険を申請することができます。
今、失業保険申請件数が爆発的に伸びているのはそのような特殊事情によります。言い直せば664.8万件という驚愕の新規失業保険申請者数は、景気の実態を表していると言うよりも国民の健康を守るためにどれほど断固とした措置が講じられているか?を物語る数字だと理解すべきです。
新型コロナウイルス禍が一巡すれば664.8万人の大半は、再び元の職場に戻るのです。
ただ、一時的な収入の喪失が永久な失職に変わってしまうリスクがあります。それは新型コロナウイルスを抑え込むのに時間がかかり、ビジネスがバタバタと倒産した場合です。
だから我々投資家が最も注目しなければいけないのは「いつロックダウンが解除されて普通の日常生活に戻れるのか?」ということです。
ロックダウン解除のシナリオ
ロックダウンはアメリカの連邦政府が宣言するものではなく州政府の権限になります。州によってロックダウンに入るタイミングは様々です。その中でも最も注目されるのは感染者数の多いニューヨーク州の動向です。
ニューヨーク州は3月22日からロックダウンに入っています。その後の感染者数の推移は下のチャートの通りです。
どんどん増えているように見えるのですが、実は増加率は鈍化しています。それを示したのが下のチャートです。
このまま増加率が漸減すれば4月6日頃に「0」成長になると言われています。言い換えれば「峠を超える」地点というわけです。
新型コロナウイルスの抑え込みに時間を喰うとリスクが高まる
ですから我々投資家が注視すべきは、まず「いつニューヨークの感染者数がピークをつけるのか?」ということです。
次にひとたびそれがピークをつけたら、その翌日から新規の感染者数が確実に毎日減ってゆくのを確認する必要があります。
ピークをつけた日から起算して、14日間連続して新規感染者数が減少を辿ればもう大丈夫、ロックダウンは解除できます。
ロックダウンが解除されれば上述の664.8万人のかなりの部分は即座に職場に復帰できます。
健康の危機が金融危機に発展するリスクも
本来一過性のものが一過性では済まされなくなる時
このようにロックダウンは一過性のものです。「あっ!」と息を呑む悪い新規失業保険申請者数が発表された3月26日、4月2日の両日とも株式市場が大荒れにならなかったのは、市場参加者が(これは一過性だ)ということをよくわきまえているからです。
しかし一つ間違えれば、本来一過性だと思われた問題が一過性では済まされなくなるシナリオもあります。
まず新型コロナウイルスの抑え込みが上手くいかない場合はスモール・ビジネスが次々に倒産して雇用は永久に失われるでしょう。
次にいまアメリカの市民、中小企業、大企業が等しく経験しているキャッシュフローの問題、もっと平たい言い方をすれば「日々のお金のやりくり」の問題がこじれて、本来「健康の危機」だったものが「金融危機」に発展すれば、ただごとでは無くなります。そういうリスクも未だ残っていると思います。
その辺りをよく見極めたいと思います。