香港不動産投資家の投資熱が日本に向かう
「不動産」だから「不動」つまり動かないと思っていたら、その不動産が動き出していると感じる今日この頃である。別にビルが動いているのではなく、香港不動産投資熱が、日本に向かっていると感じるのである。
香港が政治的に不安定な状態になって既に5ヶ月経過している。日本のメディアを見ていると香港市内が内戦状態になっているようにも思えるが、実は何もないときはのどかなものだ。しかし、いざ過激なデモが起きると火炎瓶と催涙ガスが飛び交うのは日常の光景になりつつある。
英語でいうとUnrest である現在の状況は、香港不動産投資家の投資先を香港から日本にシフトさせる一因となっていると想像される。有価証券投資は、有価証券の保護預かりが香港外でされているケースがほとんどなので、香港の投資家もあまり気にしないが、不動産投資は香港そのものなのでそこが気になるのだろう。
外国人投資家マネーが第2第3のニセコを求める
そのような中、筆者が勤務する会社には、毎日のように多くの香港人・香港在住の中国本土人から、日本不動産購入または不動産購入ローン融資の問い合わせがネットと電話を問わず来ている。会社名が「Nippon Wealth Limited」であり、Nippon Wealth =日本資産なので、不動産会社または不動産ローン会社と勘違いしてコンタクトしてくるのであろう。
当社の株主には、大手不動産会社にも名前を連ねていただいているので、そちらにお話を繋いだりするのだが、融資申し込み案件の中身は日本人の目から見ると全く想像を超えたものになってきている(※現在、Nippon Wealth Limitedでは日本不動産融資は取り扱っておりません)。
外国人に人気の高い北海道ニセコのマンションは、2ベットルームで数億円という驚きの価格で取引されており、その融資申し込みも頻繁にある。もっとも最近ニセコは外国人で混みすぎて、近隣の小樽の裏山にあるキロロリゾートに人気が飛び火しているらしい。
あるキロロのリゾートマンションへの融資申し込みは120平米で2億円となっている。なんと東京都内のマンションの値段と変わらない…。小樽裏手のスキー場が都内マンション並みに値上がりしているのだ。
そして本州にも北海道人気は飛び火しており、長野の野沢温泉と白馬高原が人気となっているようだ。香港人の友人も今は野沢温泉の古い旅館を買い取って、リノベーションに仲間と取り組んでいる。
ニセコの土地を買っておいたら5倍になったといって自慢する香港人もいるので、多分第2、第3のニセコを求めて、外国人投資家マネーが日本人投資家の頭上を飛び越えているのだろう。
都内一等地に坪3,000万円のマンション建設計画
そして極めつけは、筆者が東京出張中にどうしても会いたいというので会った外資系デベロッパーの話だ。都内一等地に有名日本人建築家の設計で坪3,000万円のマンションを建てるという。最高値ユニットは50億円近い。坪3,000万円とは、筆者の知る限りでは都内最高級マンションの2~3倍の値段である。
そのデベロッパーは世界の富裕層5,000人のリストを持っているので、日本人には売らないのだそうだ。ローンをアレンジしたいので日本の金融機関に提携ローンをお願いしているが、どこも貸してくれないので悩んでいるとのこと。
日本の金融人からみれば、坪3,000万円のマンションの査定は、まさに「想定外」で審査マニュアル範囲外なのであろうと想像された。そのため、そのデベロッパーの方には「日本の金融機関に相談するのは時間の無駄だからあきらめたほうが良い」とアドバイスしたら、嘆息しておられた。
香港の不動産価格が日本に輸出される日
2018年の香港の中古住宅取引平均価格が1億3000万円であり、筆者の住んでいる香港市内マンションも特別高級でないが普通に坪2,000万円で取引されている(無論筆者はお借りしているだけだが…)。
この香港不動産価格に目が慣れた投資家が日本不動産投資を本格化すれば、あっという間に特定の地域の値段が高騰するのであろう。それも全く日本人が気付かないところで不動産価格が形成されているような感じだ。これぞまさしく「香港不動産市場の輸出」だなと思えてならない。
東京オリンピック後に日本不動産価格は暴落する…と予言する専門家が多いが、香港不動産事情を見ている筆者には全くそうは思えない。