米中貿易摩擦と香港デモに揺れる香港株

8月終盤の中国株は、米中貿易摩擦と香港デモの影響で引き続き軟調な動きが続いています。香港デモはますます激しさを増し、特にその影響から香港株は中国本土株よりも軟調な動きとなっています。

【図表1】香港ハンセン株価指数
出所:マネックス証券作成

長江和記実業(00001)や新世界発展(00017)などの香港地場の不動産ディベロッパー銘柄は8月中旬に香港国際空港のデモが収束して、一旦は急反発したものの、8月下旬は再び売り込まれています。

8月30日に香港警察は「雨傘運動」のリーダーらを逮捕しましたが、その反発として、さらに激しい衝突も懸念されているところです。このままデモが続けば、香港地元経済への大きな打撃も懸念されるところですが、収束の兆しがみえないところで厳しい状況が続きます。

中国株は米中通商協議の行方が一番のポイントに

一方、米中通商協議については、トランプ大統領が楽観的な見方を示し、中国側から「交渉のテーブルに戻ろう」との電話があったとコメントしました。その一方で、中国共産党の機関誌「人民日報」系のタブロイド紙、環球時報の編集長である胡錫進氏は、トランプ大統領が指摘するような発言はなかったとコメントするなど噛み合わない状況が続いています。

ただし、トランプ大統領も米中で話し合う予定だとコメントしたことから微かな融和ムードも出てきています。

やはり、中国株について今後の一番のポイントは米中通商協議の行方がどうなるかになります。それだけにトランプ大統領のツイート発言に一喜一憂する不安定な相場展開が続くわけですが、もしも9月中に協議を再開させて追加関税を取り消せるようなことになれば、株式市場は大きく上昇することになるでしょう。

米中共に内需が下支え、サービス業景況感指数は悪くない

中国の経済指標を見てみると、8月31日に発表された8月の中国国家製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.5と、市場予想の49.6や7月実績の49.7を下回りました。また、製造業PMIの新規輸出受注指数は47.2に改善したものの、引き続き景況感の境目である50を下回っています。

一方、中国国家非製造業購買担当者景気指数(PMI)は53.8と、市場予想や7月実績の53.7を上回っています。

米中貿易摩擦で中国経済がスローダウンし、中国への投資が減少していることで、製造業景況感指数が悪化の一途をたどっているのは世界的な現象です。

一方で、米中共に、覇権争いに負けないために、自国経済を悪化させないよう金融緩和と財政投資拡大に取り組んでいます。その結果、内需は下支えされており、サービス業景況感指数はそこまで悪くなっていない状況です。

特に中国の場合、今の状況でインフレが進んでいると逆に金融引き締めを進めないといけなかったのが、これまでによくあったパターンです。しかし、シェール革命によって原油価格が低水準で留まっていることなどから、この時点でも景気刺激のための金融緩和ができる状況にあります。

割安感出てきた香港株、急落時は優良銘柄を拾うチャンス

前回のコラム「香港株の優良銘柄に割安感―世界株安を受け軟調な動き続く」にも書いた通り、香港の優良株は割安な水準にある銘柄が多くあります。

株価の割安さを示す指標の1つにPEGレシオがあります。PERを成長率で割って算出する指標で1.5以上が割高、1.0以下が割安なのですが、財務内容がしっかりしており、業績も成長している銘柄のPEGレシオが1.0以下の企業が数多くあるのが現在の香港株です。

もちろんこの先、米中問題はまだまだ紆余曲折があるでしょうし、毎年のアノマリーから考えると10月までは株価が軟調に動きやすいこともあります。そのため、ここからさらなる思わぬ急落があるかもしれません。しかしその時は優良株を買うチャンスと見ていけるのではないかと思います。