米中貿易摩擦と香港デモに揺れる香港株

8月の中国株は、米中貿易摩擦と香港デモ、リセッション入りを懸念した世界的な株価下落の流れに押されて軟調な動きが続いています。

8月2日(金)にトランプ米大統領が対中制裁関税第4弾を表明すると、香港ハンセン指数は200日移動平均線を大きく下回る大幅な下げとなり、その後も200日移動平均線の下での株価推移が続いているところです。

【図表1】香港ハンセン
出所:マネックス証券作成

香港株の場合は香港デモが続き、収束への展望が見えないことが大きく影響していることもあり、その下げ幅は中国本土市場よりも大きなものとなっています。

特に長江和記実業(00001)や新世界発展(00017)など、香港地場の不動産ディベロッパーが業績懸念から大きく売り込まれ、香港ハンセン指数の下落要因の1つになっています。これらの銘柄は8月15日(木)と8月16日(金)は香港国際空港のデモが収束したことから急反発していますが、8月18日(日)には香港島中心部の大通りを170万人がデモ行進したとの報道もあり、まだ予断を許さない状況です。

一方、中国の経済指標についても全体的には中国経済のスローダウンを示しています。8月8日(木)に発表された7月の輸出は3.3%増と市場予想の1.0%減を上回り、輸入も5.6%減と市場予想の9.0%減を上回ったものの、8月12日(月)に発表されたマネーサプライ(M2)は8.1%増と、市場予想の8.4%増を下回り、新規人民元建て融資も1兆600億元と、市場予想の1兆2750億元を下回りました。

また、8月14日(水)に発表された7月の鉱工業生産も4.8%増と市場予想の6.0%増を下回り、小売売上高も7.6%増と、市場予想の8.6%増を下回っています。

世界各国の製造業景況感指数(PMI)は明らかに下向きになっており、それは米中貿易摩擦と中国経済のスローダウンの影響です。中国政府も金融緩和や景気刺激策は出しているのですが、まだ十分とは言えない様子で、さらなる刺激策を打たないといけない状況でしょう。

米中通商協議の進展に期待

もっとも、悪いことばかりではありません。トランプ米大統領は8月18日(日)に米国は「中国と非常にうまくやっており、話をしている!」とツイートしています。また、クドロー国家経済会議(NEC)委員長は米中の通商交渉担当者が行った電話協議は前向きだったと述べ、今後さらなる電話協議が予定されているともしています。

米国でも株価が急落している状況の中、トランプ政権としても、来年の米大統領選挙に向けて少し焦りも出ている様子もあります。最終的には米連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ要求と中国に譲歩した交渉で株価上昇を図ってくると思います。

また、欧州中央銀行(ECB)が9月の理事会で市場の予想を上回る刺激策を用意しているといった報道や緊縮政策を続けるドイツ政府が景気後退入りをした場合には財政赤字覚悟で財政投資を行なう用意があるとの報道もされています。リセッション入り回避を目指し、世界中で金融緩和と財政投資が行われていく可能性があります。

このような状況の中、もしも秋頃に米中通商協議に進展があり、心理的な不透明感から抑え込まれていた製造業の設備投資が急増するようなことになれば、世界の景気後退入りは回避されるでしょう。そうなれば、半ば織り込みだしていたリセッションを覆し、中国株も含めて世界中の株価が大きく上昇していくシナリオも十分あり得ると思います。

特に香港株は前述のように、香港デモや米中貿易問題の影響から特に大きく売り込まれている状況で、業績の良い優良銘柄の株価水準も割安になってきているように感じるところです。

もちろん中国株も含めて世界中の株価が大きく上昇していくシナリオまでにはまだ時間がかかり、紆余曲折もあるでしょう。米中通商協議の行方を注意深く見守りながら、優良株の安値を検討していきたいところでもあると思います。