足元の米株価もすこぶる順調に戻り歩調へ
「古今東西、不況から脱して景気が拡大し始めた当初というのは往々にして中銀の政策が景気の『先回り』になる傾向が強まりやすく、結果、一旦は景気の先行きが怪しくなるというケースは過去に幾度も見られています。
そこで、やむなく中銀が当面の政策方針をハト派寄りに戻すそうとすると、そこから再び景気が走り始め、その後はしばらく中銀の政策が景気の『後追い』を続けることとなる」
前回(1月21日)更新のコラム「米・日株価の戻り鮮明で基本ドル高基調が続く」で筆者はこのように述べました。
先週行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)のトーンがかなりハト派に傾いていたことや、その後に発表された1月の米雇用統計が極めて強い内容であったことなどを見ると、やはり今回も「しばらくは景気が走りそう」であると個人的には考えます。
実際に、足下では米株価もすこぶる順調に戻り歩調を辿っています。これまでに発表された米主要企業の2018年10~12月期決算の結果を全体に眺めてみても、一部で事前に警戒されていたほど厳しい内容ではなく、市場には徐々に安心感が拡がりつつあります。
むしろ、アップルやフェイスブックなどの決算内容については市場で大いに評価される状況となっており、市場の感応度が高いフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)もしっかりと戻りを試す動きになっています。
言うまでもなく、米国では国内総生産(GDP)の約7割を個人消費が占めているわけですから、やはり米株価が堅調に推移していることは極めて重要。その意味で、足下のNYダウ平均が75日移動平均線をクリアに上抜けてきていることや、上向きに転じた25日移動平均線が下方から勢いよく水準を切り上げてきていることなどは、米景気全体にとっても非常にポジティブなことです。
加えて、2月中にも米中貿易協議が一定の落としどころを見い出すような格好となれば、さらに一段と米株価の上値余地も拡がることでしょう。
そんな米株価の堅調な推移を支えているのは、ひとつに「米金融政策の方向性がこれまでよりもハト派に傾いてきていること」であり、それは市場においてドル安材料視されやすい要素であるとも言えます。ただ、目下は米株価の値動きに連れて日本株も徐々に値を戻そうとしている局面にあり、総じてリスクオンのムードが色濃い中にあって過度な円買いに走る動きというのも見られてはいません。
ユーロ/米ドルは1.1500ドル処に分厚い上値の壁
一方、ここに来てポンドやユーロが対ドルで戻りを試そうとする動きが一服してきていることも見逃がせません。
英国の欧州連合(EU)離脱を巡るEUとの協議は、ひと頃「期限延長や2度目の国民投票実施もあり得る」などとされ、それを織り込む格好でポンドの買い戻しが進む場面もありましたが、ここにきてそうした動きも一巡。あらためて英国とEUの接点を見出すことが難しい展開となってきており、さすがにポンドをもう一段買い上がることは難しい状況になっています。
また、ユーロ圏では中心的な存在であるドイツを中心に、経済成長の鈍化傾向が鮮明となってきており、ここからユーロをもう一段買い上がることもためらわれるところとなっています。
ユーロ/米ドルで言えば、やはり1.1500ドル処に分厚い上値の壁が感じられるうえ、31週移動平均線や31ヶ月移動平均線の抵抗というのもそれぞれあって、結局は1.1400ドルを中心としたもみ合いが長く続く状況となっています。つまり、目下はポンドやユーロに対するドルの価値が再評価されやすい状況になってきており、結果として米ドル/円の下値も支えられやすい状況にあるということはしっかり心得ておきたいところです。