当座の上値目安は110.60-70円あたりか

1月7日公開のコラム「米ドル/円は行き過ぎた下落の修正局面」において、筆者は「(1月)3日の米ドル/円の下ヒゲは過去にあまり例がないぐらい長大なもので、普通に考えれば、米ドル/円相場は『一旦切り返す動きを見せる』ということになる」「(当面の焦点は)3日のクラッシュ前に位置していた108.80-109.00円処の水準を米ドル/円が取り戻せるかどうか」などと述べました。

そして案の定、足下の米ドル/円は着実に戻り歩調を辿るに至っており、先週17日のNY時間以降は108.80-109.00円処を力強く上抜ける展開となったうえ、さらに週末にかけて109.80-90円処まで上値を試す場面もありました。

米ドル/円(日足)
出所:マネックス証券作成

結果、先週末18日の米ドル/円の日足は21日移動平均線(21日線)の重要な節目を上抜け、さらに先週の週足があらためて一目均衡表の週足「雲」上限を試す展開となった点も大いに注目されるところです。

もちろん、米ドル/円が週足「雲」上限を試す展開となったことで、当面は同水準がレジスタンスとなって、ひとまず戻り一巡という展開になる可能性もないではないと思われます。

そもそも109円台後半の水準というのは、12月初旬に米ドル/円が位置していたところから1月3日に生じたクラッシュ後の安値までの下げ幅に対して「半値戻し」の水準でもあります。やはり戻り一巡感が漂ってもおかしくはないところです。

ただ、それだけに今後一段の上値を試す展開となった場合には、なおも強気で向き合って行くことが求められることとなります。さしあたっては61.8%戻しの水準にあたる110.60-70円あたりが当座の上値の目安になってくるものと見ます。

ちなみに、この水準は月足「雲」上限が位置しているところでもあり、そこをあらためてクリア・ブレイクできるかどうかは1つの重要なポイントになるものと思われます。

今のユーロ安が米ドルの下支えになり続ける可能性も

言うまでもなく、足下で生じているドル高・円安の流れは米・日株価の順調な戻りが演出しています。その背景には米利上げペースが今後しだいに鈍化して行く可能性や、米中通商協議が進展する期待などがあります。なかでも、FRBがこれまでの政策方針をやや修正する可能性については、実のところ「いつか来た道」との印象もないではありません。

古今東西、不況から脱して景気が拡大し始めた当初というのは往々にして中銀の政策が景気の「先回り」になる傾向が強まりやすく、結果、一旦は景気の先行きが怪しくなるというケースは過去に幾度も見られています。

そこで、やむなく中銀が当面の政策方針をハト派寄りに戻そうとすると、そこから再び景気が走り始め、その後はしばらく中銀の政策が景気の「後追い」を続けることとなるのです。その結果が「バブル」であり、最終的には様々なところで辻褄が合わなくなって「バブル崩壊」と相成るわけですが、その前にバブルの炎は一旦メラメラと燃え盛ることになります。

そうしたことから、米・日の景気や株価などは今後もうひと盛り上がりあってもおかしくないものと個人的には見ており、そうした局面で醸し出されるリスクオンのムードは基本的に米ドル/円を強含みで推移させることになると見ます。もちろん、足下でユーロが再び弱含みの展開となっていることも基本ドル高の流れに一役買うものと思われます。

既知のとおり、最近は欧州経済全体の減速傾向が一層鮮明になってきており、先行きの不透明感にも色濃いものがあります。よって、当面はユーロ安が米ドルの下支えとして機能し続ける可能性があり、そうした点も念頭に置いたうえで相場と向き合って行くことが肝要であると思われます。