特定材料に過剰反応するアルゴの存在を念頭に置く

2019年の外国為替相場のスタートは、米ドル/円が一時105円割れの水準まで瞬間的に暴落する「フラッシュ・クラッシュ」が生じるといった一幕があり、文字通り「波乱の幕開け」になりました。結果的に先週3日の日足ロウソクが非常に長大な下ヒゲを伴う格好となったことからして、ひとつには年明け早々の薄商いのなかで大暴れした「アルゴ(アルゴリズム取引)の仕業」という面があることは否めないでしょう。

正直、このところの“アルゴの暗躍”には目に余るところがあると思われますが、特定の材料に対して異常なまでに過敏に反応するアルゴの存在というものを念頭に置いたうえで、それを前提として相場と向き合うということもときに必要ではあるでしょう。

ちなみに、アルゴが過敏に反応する数多の材料のなかには各国・地域の政府要人発言なども含まれており、実際、昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の際にも、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が会見の中で発した幾つかの言葉を受けて、途端にドルが強く売り込まれる場面がありました。もちろん、その場でのアルゴの判断が理に適ったものであるかどうかというのは、また別の話です。

同様に、先週末4日にも米雇用統計の強い結果を受けて買われていた米ドル/円が、その後の米経済学会におけるパウエル議長講演の内容を受けて、一旦売り戻される場面がありました。

それが、あまりにも過剰な反応であると考えられた場合には、むしろ後にリターンムーブの動きが生じる可能性を念頭に置いて、相場の過剰反応を戦略的に“利用”するというのも一手であると思われます。実際、4日の米ドル/円はNY終わりまでに再び買い直されることとなりましたし、足下では基本的にリバウンド基調が続いています。

目先は3日のクラッシュ前の水準を取り戻せるか

なお、米ドル/円が一時104円台に突っ込んだ日の翌日(4日)の安値付近(107.50円処)では公的年金と見られる長期資金のまとまった買いが入っていた模様です。そのうえ、業を煮やした日本政府が急遽、金融当局者ら(財務省の浅川財務官、金融庁の遠藤長官、日銀の前田理事)による3者会合を開いた(後に浅川氏は「投機的な動きや市場のファンダメンタルズから正当化できない動きがあれば、看過できない」との見解を明らかにした)ことも、一段の円高加速に歯止めをかける重要な役割を果たしたものと見られます。

日足ロウソクの話に戻りますと、3日の米ドル/円の下ヒゲは過去にあまり例がないぐらい長大なもので、普通に考えれば、米ドル/円相場は「一旦切り返す動きを見せる」ということになるものと思われます。目先の焦点は、やはり「3日のクラッシュ前に位置していた108.80-109.00円処の水準を米ドル/円が取り戻せるかどうか」ということになるでしょう。

仮に同水準まで持ち直す動きとなった場合は、次に一目均衡表の週足「雲」が位置する109.70-80円処を試すかどうかに注目すべきと考えます。ちなみに、先週は週足ロウソクも非常に長い下ヒゲを伴う格好となっており、ここは一旦切り返す動きが強まる可能性が高いと見られます。

米ドル/円が前記の週足「雲」を超えてくれば、大企業・製造業などの想定レートから考えて、株価にも一定の好影響が及ぶことになるものと思われます。幸い、先週4日の米株価が大幅上昇となったこともあり、今週以降は徐々に落ち着きを取り戻して行く可能性もあるものと期待されます。

この2019年は、新天皇のご即位や消費増税など例年にはない大切な行事が控えており、日本政府も相場に対する監視の目を一層光らせることになるという前提で今年の相場と向き合って行きたいものです。