米中通商協議の進展と相次ぐ景気刺激策が好影響
前回コラム「2019年の中国株は幸先の良いスタートを切れた」で書きましたように、幸先の良いスタートを切った中国株ですが、その後も堅調な株価推移が続いています。
上海総合指数は50日移動平均線を株価が上に突き抜けたばかりですが、香港ハンセン指数はさらに100日移動平均線を株価が上に突き抜けてきており、底打ち基調を明確にしつつあります。
堅調な株価推移となっている理由は2つあります。まず1つは1月7~8日に北京で行われた米中の次官級の通商協議を経て、米中高官が米中通商協議について楽観的な見通し発信していることです。
やはり、米中共に通商問題の悪化はお互いの経済・政治に大きく影響することがわかってきたところであり、歩み寄りの姿勢が感じられます。次は1月末に米中の閣僚級貿易協議が予定されており、さらなる進展が期待されるところです。
2つ目の理由は、1月4日に李克強首相(写真)が財政投資拡大と金融緩和について指示したことが報道されて以降、中国当局から矢継ぎ早に景気対策が打ち出されていることです。まずは銀行の預金準備率の1ポイント引き下げが決定されています。また、自動車や家電などを対象とする消費刺激策を導入する計画も発表されています。
その他にも、年内に複数の都市で次世代通信規格「5G(第5世代)」の暫定ライセンスを付与する計画が明らかになったことや、小規模企業に対する信用枠の拡充、インフラ投資の加速、減税を進めるといった内容が検討されていると伝えられています。これら一連の景気刺激策は中国経済の下支えになると見られます。
さらなる金融緩和が中国経済にとって大きなプラスに
また、経済指標も悪くありません。そもそも中国は上海銀行間金利が2018年4月以降に大きく下がっていることを見ても分かるとおり、2018年中盤から金融緩和などの景気対策に取り組んできました。この影響が徐々に経済に現れていると見ています。
1月4日に発表されたCaixin中国PMIサービス業景況感指数は53.9となり、予想の53.0を上回りました。また、15日に発表された12月の人民元新規貸出額は1兆800億元と、こちらも予想の8250億元を大きく上回っています。
12月の消費者物価指数は前年比で+1.9%と予想の+2.1%を下回りましたが、これは逆にここから金融緩和ができる余地があることを示唆しており、悪いことではありません。2007年に景気が過熱したときには消費者物価指数が大きく上昇し、中国はインフレ対策のために金融引き締めを行わざるをえず、景気減速の要因となりました。
しかし今回はインフレの気配がないので、ここからさらに金融緩和を行えます。この点は中国経済にとって大きなプラスだと思います。なお、12月のドルベースの輸出額は前年同月比で-4.4%となっていますが、これは人民元がドルに対して切り下がっていることも影響しており、人民元ベースでは0.2%増のプラス成長となっています。
ここまでに書いてきたように、中国経済は景気刺激策によって今後、下支えされることが明確になりつつあります。ここで米中通商協議の進展が加われば中国経済は一段の回復基調となり、それは当然株価上昇にもつながると考えます。
米中通商問題により世界の中でもいち早く調整してきた中国株だけに、株価の割安さは十分なレベルまで調整しているところですから、反発の勢いは、強いものになるのではないかと期待したいところです。