足立武志氏セミナーレポートの中編では、年末までにやっておきたい損益の把握についてご紹介します。過去3年間の繰越損失、今年の損益、保有株の含み損益を把握することで、どのように税金の払いすぎを防ぐことができるのか、確認しましましょう。

※当コンテンツは2018年11月19日収録セミナーの書きおこし記事です。

 

前編「株式投資の税金再確認」はこちら

損失を3年間繰越するために年末にやるべきこと

まず2015年から2017年の損失のうち確定申告で繰越控除して、翌年以降に繰り越した損失額を把握してください。2つめに今年の損益を把握してください。この損益とはもう実現した損益のことです。3つめにお持ちの株の含み損益(まだ売ってないけど売ったとしたら実現する損益)を把握してください(図表1)。

【図表1】
 

その年に生じた損失は、3年間繰り越して翌年以後に得た利益と相殺することができます。なので相殺し切れていない繰越損失が残っている場合、2015年の繰越損失は今年2018年で消滅してしまい、2018年で使い切らないと切り捨てになってしまいます。

例えば2015年の時の繰越損失が現時点で100万円残っているとしますね。もしこの損失を利益と相殺できればこの100万円×20.315%ですから20万3150円の税金を軽減することができます。ですから、2015年の繰越損失が残っている場合は、これを今年中に相殺することをまず考えたいわけです。

損失を相殺する順番がある

もし現時点で含み益を持つ株があれば一旦売却して利益を出し、これと残っている繰越損失を相殺することによって税金を軽減することができます。

この損失を相殺する順番に注意しましょう。2018年に他の株の売却による損失がある場合は、まず2018年の損失から相殺します。この2018年の損失が全部なくなって利益を出さないと、2015年の繰越損失ができません(図表2)。

【図表2】
 

2016年2017年の場合でも基本的な考え方は同じですが、緊急性が高いのはこの2015年です。2016年の損失については来年まで繰り越せますし、2017年の損失については後2年間繰り越すことができます。

大きく利益が出たら含み損がある株を売却する

逆に今年2018年利益がプラスになっている場合――今年の相場は厳しかったのでプラスになってないかもしれないのですが――例えば何年も前に買った株を今年売ってプラスになっていたとします。このまま何もしないと、その売却益に対して20.315%が課税されてしまいます。この売却益を小さくすることによって、税金を軽減することができるわけです。

含み損を抱えている株がある場合は、それを一旦売却することで損失が確定します。この損失と、すでに売却して得ているこの売却益を相殺して税金を減らすということが可能になっています(図表3)。

【図表3】
 

まとめると、現時点で損失がある、または前年以前の繰越損失が残っている場合は、含み益がある株を売却することで益出しをします。逆に現時点で利益が出ている場合は、含み損がある株を売ることで損出しをします。年内に行うことで税金を抑えられるのです。ぜひ検討してください。

 

後編「株式売買の確定申告」に続く