前回指摘したように人民元上昇期待で今後が楽しみな中国株ですが、今回は銘柄の考え方として、ニッチマーケットの首位企業を考えてみたいと思います。中国の内需を代表するような銘柄である、カップ麺などの最大手の康師傅(0322)や生理用品、ティッシュで最大手の恒安国際(1044)などは非常に内容の良い企業で、長期的な展望も良好ですが、既に株価は高水準です。たとえば康師傅の2009年実績PERは36倍です。むろん、それでも長期的には妙味があると思いますし、下がったところで買いを検討するのは面白いと思います。しかし、少し違う角度から考えて、誰もが知っているような業界最大手ではなく、まだあまり知られていない、割安なニッチマーケットの覇者を探して投資を検討するのも1つの投資の考え方だと思います。

たとえば、食品であれば神冠控股(0829)という銘柄があります。同社はソーセージの皮を製造している企業です。ソーセージの皮(ケーシング)は豚や羊の腸を原料とする天然のケーシングが従来からの製造方法であり、中国ではソーセージの9割がこれを用いています。ただし安定的なコストで大量生産や流通をするには不向きとされています。残り1割の皮はコラーゲン・ソーセージ・ケーシングと呼ばれ、牛の内部の皮のコラーゲンを可溶化し、人工的に作られたソーセージの皮です。神冠控股はこのニッチな商品で市場シェア7割を持つ会社です。中国ではコラーゲン・ケーシングを使ったソーセージは1割ですが、欧米では3割に達しており(残り7割は天然の皮)、世界最大の豚肉消費国である中国で、今後シェアが上がって行く可能性があります。既に同社の工場は常に90%以上のフル稼働状態が続いており、供給者が少ない中で増える需要を捌ききれないような様子です。

このようにニッチマーケットの覇者的な企業は業績が良いのに割安に放置されているケースがままあります。具体的な例としては神冠控股(0829)以外にも、石油化学企業および鉄道向けの安全及び制御システムで2位以下を大きく引き離す断トツのトップ企業である中国自動化(0569)、電気(電動)自転車用バッテリーで中国トップであり、将来的には電動自動車用のバッテリー開発も視野にいれている天能動力(0819)、計測器と制御装置の市場で約10%のシェアを持つ業界トップの中国高精密(0591)、ギアボックス(歯車伝動装置)の生産販売を手がけ、特に風力発電用ギア装置では市場シェア8割近くを占める中国高速伝動(0658)など、あげていけばキリがありませんが、ニッチマーケットの覇者という観点から見ると、いろいろ面白い銘柄が見つかると思いますので、是非一度、お調べになってみてはいかがでしょうか?