前回のレポートで、4-6月期決算について、「まだ第1四半期の決算なので通期見通しを修正する企業は少なく、結局のところ個別銘柄ベースでは大きく反応が出ても相場全体を動かすイベントにはなりにくい」と述べたが、これまでのところ、そのような状況になっている。安川電機の超ポジティブ・サプライズの好決算という非常に幸先の良いスタートを切った決算シーズンだが、相場全体の地合いを改善するには至らず、日経平均は2万円程度でのもみ合いに終始している。安川電機以降も信越化学や日電産など好決算が続いているが、あくまでも個別や当該業種のみの局地戦にとどまっている。物色対象が広がらないのはある意味、当然かもしれない。
IFISの集計による過去4週間のリビジョン(アナリストによる上方修正と下方修正の件数の差)をみると、上方修正が多いのは圧倒的に電機、ついで化学である。これが今の時代のトレンドだろう。米国ではFANGを中心とするハイテク株が相場をリードして最高値更新が続く。AIという文字をメディアでみない日がない。すべてのものがネットにつながるIoT時代が本格化するなか、ビッグデータやロボットが第四次産業革命の柱になる。従来から主張してきたことだが、そういう世の中で、何をやるにしても必要なのは電子部品だ。昨日の日経報道にもあった通り、電子部品の受注は過去最高に迫る勢いで伸びている。
電機セクターは幅広い銘柄が含まれるが、そのなかでも電子部品は有望だろう(iPhoneだけではないのだ)。そしてその電子部品の部材を供給するセクターが信越化のような化学セクターである。この二つのセクターが物色の柱となる。
一方、銀行と自動車は厳しい。米国金利の上昇が鈍く、為替も円安が見込みにくいからだ。
米連邦準備理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決めた。声明文では年内としていた保有資産の縮小を始める時期を比較的早期へと修正し9月会合で縮小開始を決める可能性を示唆したが、同時にインフレについても慎重な見方をしたことから市場では「ハト派」的ととらえられ、長期金利は低下、為替は円高で戻ってきている。
7月4日付のストラテジーレポートで、「世界的な金利上昇が円安の背景だが、主要な中央銀行が金融緩和の出口を模索するような兆しが出ている中で、日銀だけが蚊帳の外という状況が円安を加速させている」と書いた。このひと月あまりで、「主要国が緩和からの出口を模索、日銀だけは緩和継続、従って為替は円安」というシナリオはすでにじゅうぶん市場に織り込まれている。事実、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場では投機筋(非商業部門)による円の売越幅が12万枚を大きく越え3年半ぶりの高水準に積み上がった。この状態では仮にECBが秋に量的緩和の縮小を決めたとしても、そこでいったん材料出尽くしとなって、たまった円売りを巻き戻す動きから一気に円高が進む可能性がある。これは米国のバランスシート縮小についてもまったく同じことが言える。「Buy on rumor, sell on fact(噂で買って事実で売る)」の円高リスクには警戒が必要だ。
但し、これも巷間、よく言われることだが、日本株はかなり円高抵抗力をつけてきている。
7月4日付のストラテジーレポートで(そして一昨日のモーニングサテライトでも)示した通り、世界の景況感は良好で、その状況はグローバル景気敏感株の日本株にとってはポジティブである。業種別にばらつきはあるが全体としては業績も好調で、バリュエーションも適正である。仮に円高が進行して日経平均が2万円を大きく割り込むような場面があれば、押し目買いで対処すれば報われる公算が高いと思う。
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