今日から実質新年度入りである。4月は1年のうちで1月に次いで2番目に株価が上昇しやすい月として知られる。日本の新年度入りでニューマネーが入ってきたり、機関投資家が動きやすくなったりするからというのが一般的な解説である。実際、4月は外国人の買い越し額も年間を通じてもっとも大きい月である。
しかし、この「機関投資家が動きやすくなったりする」というのが、曲者である。その対として「期末を控えて動きにくい」とよく言われるのは、(大組織にありがちだが)その年度の<着地数字>を固めてしまったので、下手に売買して損でも益でも出して数字を狂わせてくれるな、というお達しが出るからだ。
期が明ければもう自由に動ける。だから新年度入りしたあとの相場は、それまでストップしていた売り物が出て波乱含みになりやすい。
特に異常値とも思えるのは、年度末最終日の陰線である。年度末の最終営業日の日経平均について、始値⇒終値の変化を調べると、2000年以降、昨年までの17年で16回がマイナス、すなわち陰線となっていた。その16回の累計は1800円余りで平均すると114円幅になる。
これに次いで名実とも新年度入りする4月第1営業日も陰線になりやすい。同期間では10回陰線となっており、累計額は1650円余り、平均すれば165円幅の陰線である。
ここ数年を振り返っておこう。
昨年2016年は3/30、3/31も大きな陰線を引いた後、4/1に555円幅の陰線を引いて前日比595円安という急落を演じた。昨年は3/29~4/6まで7日連続安。いったん下げ止まったものの、8日ザラ場で15500円を割り込み、この間の下げ幅は1500円を超えた。3月中にGPIFをはじめとする年金の買いが続き、その「特需」が年度替わりとともに剥落したことが影響していると見られている。
2016年3月末~4月上旬の日経平均
2015年は権利付き最終日からすでに崩れ始めた。3/26と3/27の2日間で460円下落。3/31と4/1で376円安。年度末の3/31は400円近い幅の陰線を出している。
2015年3月末~4月上旬の日経平均
2014年は比較的波乱なく過ぎたが、3/31と4/1の日経平均が陰線だったことに変わりはない。
2013年は3/28~4/2までの4営業日すべてが陰線でこの間の下げ幅は約400円。2012年は3/29~4/4まで5日連続陰線だった。特筆すべきは実質新年度入りした3/28から4/11まで、間にわずか26円高という小反発を挟んで下げ続け、その累計額が800円近くに及んだ下げとなったことだ。
平穏に過ぎた年度末~新年度入りというのは2000年以降では2005年と2006年くらいである。
新年度入り相場が波乱含みになりやすいのは、金融機関から益出しの売りが出るからだろう。いわゆる「期初の売り」が出やすいのは、期間収益が評価対象として重視されやすい機関投資家やファンドマネジャーの心理的な背景が要因と言われる。新年度入りの早い時期に保有株を売却して当期の利益を一定度合い確保しておけば、年度後半に向けて気持ちに余裕が出る。その意味で今年は昨年度末や9月中間期末に比べても3000円程度高く、期初の売りが出やすいと言える。警戒しておくべきだろう。
では年度末最終日の陰線はどういう背景か?邪推かもしれないが、年度末の「お化粧買い」に売りをぶつけているのではないか。あるいは、その反対で、「お化粧買い」を期待して寄り付きから買いで入っても一向に「お化粧買い」が入ってこないのを見て、諦めて投げる短期筋が多く引けにかけて下げ足を速めるのだろうか。
実際のところはわからないが、2000年以降、昨年までの17年で16回の陰線というのは驚く。売りから入れるひとは試してみたらいかがか。無論、投資の成果については自己責任でお願いしたい。
【お知らせ】「メールマガジン新潮流」(ご登録は無料です。)
チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから