イベント目白押しの6月相場がスタートした。早速、明日2日はOPEC総会が開かれる。4月にカタールのドーハで開かれた産油国会合では増産凍結合意に至らず、直後の原油相場が急落する場面があったが、すぐに持ち直し上昇トレンドが崩れなかった(グラフ1,2)。これは商品先物相場では、いかにトレンドが重要かということ示す象徴的な出来事であった。商品相場は需給要因で決まるというのが原則だ。ところが昨今、CTAのようなマクロ系ヘッジファンドの隆盛で、ほとんど「トレンドがトレンドを規定する」というような相場つきになっている。ではまったく需給は相場に影響しないかと言えば、もちろんそんなことはなくて、例えば今の原油相場はカナダのオイルサンドの山火事とかナイジェリアの政情不安などによる供給制約が価格を支えている面がある。
話を今回のOPEC総会に戻すと、今回もまた増産凍結で合意できるとは誰ひとり思っていない。例えばモーサテサーベイでは88%の番組コメンテーターが合意できないと回答しており、またQUICKがおこなったアンケート調査では回答者全員が合意できないとの見方を示した。だから、実際にそういう結果になっても失望売りは出ない。期待がないので失望しようがない。こういうケースでは、むしろポジティブ・サプライズを警戒するので事前には売れない。だから、「何もなかった」ということを確認してから売りが出る可能性がある。増産凍結合意ができなかった、という理由で売られるのではなく、ファンダメンタルズから - 端的に言えば、ドル高で売られる可能性があると考える。
基本的に原油価格はドルと逆相関の関係にある(グラフ3)。ところがこの1カ月はドル高、原油高が共存してきたが(グラフ4)、これは前述したカナダのオイルサンドの山火事とかナイジェリアの政情不安などの特殊要因に支えられたもの。この話が出てから1カ月経つので、そろそろ賞味期限が切れる。ここからは米国の利上げ観測の高まりを背景にドルが強くなる可能性があり、素直に考えれば原油価格の戻りも1バレル50ドルというきりのいい水準でピークアウトする公算が高いと見る。
春先からの米国株は原油価格の上昇に支えられてきた。グラフ5に示した通り、1月2月のWボトムとそれ以降の戻りは原油とNYダウの歩調は同じである。違うのは足元の動きだ。ドル高の影響で米国株は再び上値が重くなっている。原油だけが特殊要因でドル高に逆らって強ばったまま高値を維持している。しかし、これはOPEC総会というイベントを控えてポジティブ・サプライズ警戒で売れないという特殊要因に支えられている。OPEC総会が過ぎれば、素直にドル高⇒原油安という流れになるだろう。そうなった場合、米国株の一段安=リスクオフとなることには警戒が必要である。
これまで見てきたように、鍵はやはり為替であり、ドルの基調である。日本株にとってはドル高円安がなによりの好材料であるため、米国の利上げ観測の高まりを背景にドルが強くなるというシナリオをメインに考えるならば、原油安・米国株安でリスクオフとなっても日本株の大崩はないだろう。但し、そうしたグローバル・マーケットのセンチメントを振り切って、日本株だけ独歩高となれるかは、非常に心許ない。
と、この原稿を書いている1日午後の東京株式市場で日経平均が急落、下げ幅を300円超に広げている。一時は326円安の1万6908円まで水準を切り下げた。外国為替市場で円相場が1ドル110円40銭近辺にあったストップロス(損失覚悟)の円買い・ドル売りを巻き込んで109円65銭まで急伸した。円相場の急伸を受けて日経平均先物に売りが膨らみ、ファストリやKDDI、ファナックなど値がさ株に裁定取引解消に絡んだ売りが出て指数を押し下げたようだ(日経平均の下落率のほうがTOPIXより大きい)。
5月10日以降、日経平均は 2 週間ほど75日移動平均線近辺で揉み合う動きが続いてきたが、5月25日に窓を空けて25日移動平均線を超える水準までジャンプした。そこからは25日移動平均線を下回っていない。今日の大幅安で、今週初めの水準に逆戻りした。もう一段、押す場合は25日移動平均線がサポートになるかを試しにいくだろう。