今回、あらためてチェックしておきたいポイントは大きく2つあります。1つは本欄の前回( 10月25日)の更新分で触れたドル/円の月足チャート上において、昨日(10月31日)のNY終値、つまり10月の月足・終値が辛うじて31カ月移動平均線(31カ月線)を上抜ける格好になったということです。

振り返れば、今年の1月以来長らくドル/円は31カ月線に上値を押さえられ続けてきたわけですが、ようやくここで同線を終値で上抜けたことにより、今後の上値期待が大いに膨らむ状況となってきました。なおも、月足ロウソクは一目均衡表の日足「雲」のなかに潜った状態にありますが、いずれは日足「雲」上限の水準(現在は116.10円に位置)を試す可能性が高いと見られ、仮に同水準をも上抜けることとなれば、年初の高値や昨年12月高値が位置する118円台後半の水準も意識されることとなるでしょう。

もっとも、目先のことを言えば、まずドル/円は先週27日に一時114.45円まで上値を伸ばし、今年の5月高値や7月高値と顔合わせして反落となったことから、当面は114円台半ばあたりの水準が1つの上値抵抗として意識されやすいということも事実です。

また、米大統領は米連邦準備理事会(FRB)の次期議長を明日(2日)にも指名するとしており、目先は「誰が指名されるのか見定めたい」として手控えムードが拡がる可能性もありますし、仮にハト派とされるパウエルFRB理事が指名された場合には、あらためてドル売りになびきやすくなる場面に一時的にも遭遇する可能性はあります。さらに、この5日から米大統領が来日&アジア歴訪することで、再び北朝鮮リスクへの警戒が市場で強まる可能性があるという点にも注意しておく必要はあるでしょう。

チェックしておきたいもう1つのポイントは、本欄の前々回( 10月18日)の更新分で触れた足下のユーロ/ドルの値動きにおいて、後に「ヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)」のフォーメーションが完成したということです。

周知のとおり、先週26日に行われた欧州中央銀行(ECB)理事会で決まった量的緩和策からのいわゆる「出口戦略」は、市場が事前に期待していたものに比べてかなり緩やかなものとなり、その声明とドラギ総裁会見の内容に対して市場は、明らかに失望の反応を示すこととなりました。

結果、当日(26日)のユーロ/ドルの日足ロウソクはかなり長い陰線となり、その一日だけで21日移動平均線や一目均衡表の日足「雲」下限、89日移動平均線などといった重要な節目を次々と下抜けたうえ、さらに7月下旬あたりから形成されていたと見られる三尊天井のネックライン水準=1.1660-70ドル処をもクリアに下抜けることとなったのです。

翌27日に一時1.1574ドルまで下押したところで目先は一旦下げ渋る展開となっていますが、今のところはネックライン水準が当座の上値抵抗として意識されている模様です。今後あらためて一段の下値を試す展開となった場合は、年初につけた安値=1.0340ドルから9月高値=1.2093ドルまでの上昇に対する38.2%押しの1.1420ドル処、さらには50%押しの1.12ドル台前半の水準などが、中期的に意識される展開になっていくものと思われます。ちなみに、三尊天井が完成した場合の当面の下値の目安というのも、セオリーでは1.12ドル台前半あたりの水準ということになり、一応は今からでも念頭に置いておきたいものと考えます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役