フランス同時テロによる株式市場への悪影響が警戒されましたが、週初16日の日経平均の200円安も先週末の欧米株の下落で説明がつく範囲でした。欧米市場ともに影響は限定的でした。というか、米国市場に至ってはダウ平均が200ドルを超える上昇となるなど、地政学リスクをまったく感じさせない動き。株価は所詮、景気の鏡です。一部の地域で起きたテロが経済に及ぼす影響は誰にもすぐにはわかりません。
欧州中央銀行(ECB)にとっては、物価や景気の下振れリスク以外に追加金融緩和を実施する理由が1つ増えるかたちとなりました。ユーロ相場は現在、トレンドはどちらかというと下落基調にあります。欧州景気の減速を先取りする動きだと筆者は予想していますが、さらにテロの脅威が広がれば、ある程度のダメージは懸念されるところです。ゆるやかなユーロ安を容認するかたちで景気を支えないといけないため、ECBによる12月の追加緩和はあると思われます。
さて、日経平均は11月5日から16日までの8日間で「陽線」が続きました。17日はわずか11円足らずで9陽連を逃してしまいましたが、8陽連でも過去にそんなに数多くある記録ではありません。いちばん直近でも2007年6月22日までの8日間以来となります。
連続陽線だからといって上昇が続く相場とは限りませんが、下げて始まっても買いが入って終わるため弱くはありません。下落相場の中で8日間も陽線が続くこともないでしょう。連続陽線が出現する株価の水準によって見方は違いますが、今の状況、カラ売り筋にとっては収益が上がりにくい環境であることは間違いありません。日経平均は19700円前後の上値の壁を突破しました。週初の下げが2万円達成に良い助走になった可能性が高く、月内の2万円到達。目標達成感で調整はあっても、年内には6月に付けた年初来高値に近づく可能性は高いとみています。
2000年以降の15年間、国内主要指数の12月のパフォーマンスで最も好成績なのは日経平均です。次はTOPIXミッド400(TOPIXラージ70に次いで時価総額、流動性の特に高い順400銘柄で構成)、TOPIXラージ70(TOPIXコア30に次いで時価総額、流動性の特に高い70銘柄で構成)と続きます。日経ジャスダックやマザーズなどの小型株ではなく、比較的大きな銘柄で構成された指数のパフォーマンスが良好です。
師走相場は「餅つき相場(上げ下げする相場)」になりやすいといわれますが、昨年と同じパターンだとすると、今年も12月11日のSQ(先物やオプションの清算日)に向け先物主導で上昇?といったシナリオが浮上します。昨年は10月安値(14529円)から12月高値(18030円)まで24%上昇しました。今年の9月安値(16901円)から同じ率を当てはめると20957円となり、年初来高値(20952円)に近い。そこまでは許されると判断してもよさそうです。
8月急落前、2万円をサポートに堅調な相場が続いていました。なので、今は逆に上値抵抗になりえる2万円をすぐに超えることはないだろう、と見立てる売り方が多ければ多いほど、相場が押し上げられる可能性が高まります。日経平均が下落すれば利益、上昇すると損失になる売りポジションを先物やオプション取引を使って組んでいた投資家は、これだけ下げて始まっても上昇して終わる相場が続くと、むしろ買い方よりも売り方が先高期待を持つようになり、上昇しても損失を限定するために買いポジションを増やしたり、売りポジションを解消する行動(買い戻し)をとります。それが今回もSQに向けて相場を押し上げる力になるかもしれません。
当コラムの第387回 「株、ドル/円とも2月ごろまでボックスか?」で、株とドル円は2月の重要月まではボックスではないかとコメントしましたが、このスピードだと2月に向けては円安・株高にかなり振れる展開もありえますね。日欧の追加緩和期待と米国の利上げなどが要因です。ただ、そのあとは警戒が必要です。中国の需要不足などを背景として、原油価格を中心に商品市況が歴史的に軟調です。12月の米国の利上げが逆効果として来年でた場合、円高・株安の反動には注意しておく必要はありそうです。
東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
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