4月下旬に公表された日銀による「展望リポート」では、2年程度で2%の物価上昇率を達成できる道筋が示されました。けど、非現実的な見通しに懐疑的な見方は多いようです。
欧州や中国の景気減速に加え、米国でも予想を下回る指標結果が目立ち始め、米長期金利の低下を通じてドル高を抑える要因となりえます。主力企業の想定為替レートは対ドルで90円~95円に集中しており、円高方向へ揺り返しが生じる局面では株価の売り圧力となりリスクです。しかし、昨年後半から始まった急速な円安。その反動リスクは考慮されたのでしょうか。95円など直ぐそこです。昨年11月はドル円で1ドル=80円。せめて85円の想定ぐらいにしておかないと、円高リスクに耐えられない企業も出てくるでしょう。
円高メリット株を探しておく?必要はあるでしょう。ABCマート(2670)は、ウオーキングブームの一巡や韓国での値下げによる利益率低下で苦戦ですが、円高で注目株ですね。というか、円安でも株価は高値更新をうかがう動き。こんな調子だと、円高局面の上げは倍返しでしょう。発想やイメージでいくと、良品計画(7453)などの小売株に比べ出遅れ感の強いイメージがあります。いまの段階では、実際にこの株が動き出したとき、出遅れを感じる投資家がどれだけいるかを想像できることが重要です。自分が仕込んでも、ついてくる買い方がいなければ、自分が利食えません。長期チャートの高値もみ合いに加え、短期チャートでも高値もみ合いは先高パターンでしょう。三井製糖(2109)なども悪くない動きで、円高局面では面白いかもしれません。
あと、5月は「自社株買い」銘柄に注目です。例年、取得枠設定の発表が多くなるのは、2月、5月、8月、11月。日本株は上昇基調に乗っています。株式市場に流入している資金の回転は良好なので、株価へのインパクトが思った以上に強く出る銘柄もあるでしょう。もちろん、どんな企業が発表するかなどわかりませんが、手詰まり相場ですから、発表後は材料視される公算が高いです。
ただし、言わずもがな、それだけを買いの判断材料にするのは危険。例えば、株価を一株あたりの純資産で割ったPBR(株価純資産倍率)が1倍を割り込んでいるとか、PER(株価収益率)が低いかどうかなど、別の尺度でも買いと判断ができるものでなければいけません。
あるセミナーで聞いた話なのですが、日本の企業全体で200兆円の現金があるそうです。最近、海外のヘッジファンドから、「日本ではアベノミクスから5ヶ月程度経っても、企業は投資に動かないのは何故だ!」というメールが返ってきたらしい。要するに、投資にせよ、株主還元にせよ、現金をねかすな!ということでしょう。やはり、そういう声が高まりだしてきましたね。彼らも、既に買った株の価値を高めないと、自分が利食えません。米国では配当重視のファンド残高はリーマンショック以降、急速に増加しているようです。米国人は配当が着眼点です。自社株買いや増配の発表には、海外からの目が向きやすい。シンプル過ぎる考え方ですが、何よりもわかりやすい材料です!
東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ