今週も海外投資家動向のお話です。8月の海外投資家による日本株の売り越し額は1兆656億円に膨らみました。一方、年金の手口となる信託銀行は6700億円程度の買い越し。2009年3月以来の高水準です。

外資系証券の寄り付き前の注文動向。これも先週29営業日ぶりに買い越しになる局面があったのですが、売り越し基調に戻っています。
1兆円も売ったわけだから、この先、「もう売らない」とみるか。いや、1ヶ月で1兆円売るぐらいだから、「まだ売る」とみるか?

さて、2003年以降、月間の売り越しが1兆円前後となったのは今回含めて6回。その翌月以降、売りが数ヵ月続くケースと、翌月から買い越しに転じるケースがありました。
8月に1兆656億円の売り越しに転じる前、実は2010年7月~2011年7月までの間で、5兆8700億円程度を買い越していました。なので、8月は2010年7月からの買いに対して18%程度を売ったことになります。

今回8月のように海外投資家の売り越しに対して、信託銀行、投資信託、個人が買い越す行動パターンはよくありますが、今回と非常によく似た状況が2007年8月にもありました。もちろん、相場局面は全く違います。

当時も前年の2006年7月~2007年7月までの間で買い越し基調が続き、その間で11兆2525億円の買い越し。2007年8月は1兆332億円の売り越しとなりました。しかしそのあとも、2008年3月まで売り越しが続き、2007年8月からの売り越し額は3兆9810億円に達しました。2007年7月まで買った分の35%程度を売った計算になります。

海外投資家といっても、地域別に分かれていることや、売買の主体、投資期間、相場観はそれぞれ違います。単なる数字上の話ですが、仮に2010年7月から買い越した額の35%程度まで売りが続くとみると、ここからまだ1兆円近く・・・、そんな皮算用は当たって欲しくないですね。

ただ、主力大型株を見ていると、日経平均が安値更新しながらも、底固めの動きになってきています。ギリシャのデフォルトやユーロ離脱の話まで出てきている状況ですが、マーケットの反応をみて織り込み度合いはどうでしょう。買い材料探しの局面にあると思います。

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ