トヨタ株は下げ止まったのでしょうか。2月4日安値の3195円は投資尺度である一株純資産3231円(今期の第3四半期)を少し下回った水準。さすがですね、そこを意識して買い戻されています。時価総額首位の銘柄ともなりますと、ファンドなどの組み入れ銘柄上位にもなるでしょうから、ファンドマネージャーの視点からは、一株純資産といったバリュエーション面の価値は下げ止まりのメド、「買いの根拠」ができたわけです。

株式の投資尺度となる指標は、株価を一株純資産で割ったPBR や、株価を一株当たり利益で割ったPER、配当利回り、成長性、業績変化率、業界内のシェア、経営者の考え方、などいろいろありますが、特にこの時期注目したいのは全体相場が下げたときに連れ安となった高配当利回り銘柄。東証1部の主力株の中にも3%を超えるものはたくさんあります。

「配当利回り」とは、1年間の配当金を株価で割った数値で、投資した金額に対してどれだけの利益を得られるかを%で表します。ただ、配当金は将来受け取る可能性のある金額を用いて算出しますので、「予想配当利回り」といった方がいいかもしれませんね、「期待配当利回り」ともいいましょうか。分母は現在株価を用いますので、当然、安いときに買った方が「期待配当利回り」は高くなります。
3月末を控え、中期的に上昇基調が継続していると判断できれば、キャピタルゲインも狙いつつ、高配当狙いは得策です。ただし、何でもかんでもではありません。株価はPER 、PBR、配当利回りなどのバリエーションを反映しやすいといえますが、価格現象としての「相場」というのは無視できません。

例えば、キヤノンの予想配当利回り2.96%に対して、現在の東証1部の予想平均利回りは1.78%(ともに17日の終値ベース)。配当以外は考えないとして、キヤノンが東証1部の平均利回り1.78%まで買われるとすると、6180円まで株価の上昇余地があるという理屈の話になります。
どの銘柄も同じ考え方をあてはめることはできますが、価格現象としての「相場」の世界では、過去の動きがそれぞれ違うので戻り売りもあればリズムも違う。どの銘柄も同じようにはなりっこないわけです。
同じ高配当利回りの銘柄があって、片方は下げトレンド、もう片方は上昇トレンドの中の調整局面、にあるとします。しばらくたって、どちらが配当利回りのバリエーションが効いたかといった議論になると、上昇ドライブが効いている方が勝つケースは多いと思います。これは、PERやPBRなど・・・他の投資尺度も同じことが言えます。
最近の某新聞に書いてありましたが、決算発表を終えたあと、東証1部の今3月期ベースの予想PERは30.6倍(16日現在)程度になったとのこと。前期の決算がほぼ出揃った昨年5月は38倍程度まで上昇していたそうなので、随分低下したことになります。TOPIXの株価は昨年5月とあまり変わりませんので、業績の改善ぶりが凄いということですね。
さらに、証券会社などがリポートする来期予想ベースでいきますと、20倍程度に下がる見込みとしているので、ここでも「買いの根拠」はある。というか控えめでも、売る理由が一つなくなったといえましょう。それでも市場がもたつくのは何故?上がるべき相場タイミングではないからです。
あくまでも、株価の投資尺度といった理屈だけをみるのではなく、「相場」が重要です。株価と相場は違うと学びました。「買いの根拠」は表面的には投資尺度としながらも、本質的には相場を「買いの根拠」とする方が重要なのです。高配当利回りの銘柄でも、上昇トレンドにある銘柄を選びましょう。

東野幸利

株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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