米ダウ平均の11月5日の上げがポイントでした。雇用統計の発表がある前日の大幅上昇です。急落後のリバウンド局面ではよく見る長さの陽線ですが、さすがにこの位置からの長い陽線での切り返しにはビックリさせられました。直前の10月29日にもほぼ同じ長さのものが出ているので珍しくはないのですが、前日にかなり長い上ヒゲを引いた後だっただけに、感じたものが大きかったのでしょう。
一般的に出る位置にもよりますが、実体部分(始値と終値の長さ)の3倍以上に長い上ヒゲは売りシグナル、と叫びたくなるものです。そのヒゲ売りシグナルを帳消しにするような長い陽線でしたので、私なりにその強さにびっくりしたといった次第です。周りの人は何も言っていなかったのですが、その人の頭の中では解決し難い現象だったのです。

弊社のHPやニュースなどでも、「米ダウ平均の長い上ヒゲで下落に注意」みたいなことを結構書いてしまったので、お恥ずかしいところでした。逆に、大陰線(長い陰線)になると思っていた私にとっては、まったく正反対、まさに騙された日でもありました。
強気、強気でいた人が弱気になったとたん、反発するというのは、まさに心理的なもので、よく私はそれをやってしまいます。
直近でお話ししました、もち合い相場において強気でいた人が、弱気になって持ち株を売ったとたんに反発して、「やっぱり強いやないか?」と、買い直し、そして売り値よりも買い値が高くなるパターンですよ。売買しないアナリストも同じミスをしてしまうのです。

少し違いはありますが、私自身の仕事上でのバロメータ。例えば、日経平均先物の上値メドや下値メドの情報提供として、「先物サポート&レジスタンス」といったコンテンツを作成し、配信しています。大体、中心値から上下500円ぐらいのレンジ内の節目をいくつか掲載していれば十分(日経平均先物の過去の平均値幅は一日200円前後だから)なのですが、ボラティリティが大きくなると、どうしても一日の変動幅が大きくなっていき、最終的には1000円以上乖離した水準を調子にのって掲載したくなる。
より高い上値メドや深い下値メドを探すわけですが、そんな状況になると大体マーケットは、「一旦底入れ、頭打ち」となるケースが多いわけです。リーマンショックで日経平均が7000円を一時下回る局面では総悲観になり、5000円ぐらいの下値メドを掲載し始めると、翌日から反発に転じたということもありました。
結構多い現象です。下げ相場でコンテンツを作成している最中に、「こんな下値メドを書くようになったら、どうせまた底打ちするんだろうな~」と思いながら書くのですが、やっぱりそうなるものです。皆様も自分の投資行為、あるいは気持ちのバイアスで自分自身がこんなテンションになったときは相場は必ずそうなる、という現象はあるかと思います。

ダウ平均を3月安値からの上昇過程で二分割しますと、7月10日安値を基点に分けることができます。3月9日安値から7月10日安値までが一つ目。もう一つは7月10日安値から10月30日安値までです。両局面ともに上げ下げの繰り返しで、過熱気味に上昇してきたわけではない。
米覇権時代は終わり・・・大恐慌前夜か、などと言われながらも、じりじりと上がってきているわけですから、売っている人にとっては「おかしい、おかしい」と、弱気の逆張り戦略で戦っていると思いますよ。売り込みが一番溜まるパターンですね。実際の売り残高は増加していませんが、気持ちの売り込みは相当溜まっているでしょう(笑)。 

特徴的なのは、3月9日安値から7月10日安値までの一つ目は、最後の下げが比較的大きいことです。両局面ともに同じ70日前後で上昇したにも関わらず、上の位置の二つ目では大きな調整に至ってないということ。上値指向がまだ強いということなのです。一つ目のように大きな押しがなかった分、その後は上にパワー炸裂か。
11245ドル?これは2007年高値14198ドルから3月安値までの下げの61.8%戻りの水準です。米雇用者数は22ヶ月連続して減少、そして失業率は10.2%。今のドル劣勢の状況でも株価はここまで高位を保っているわけですから、ドル回避の流れが一旦でも強まれば、可能性はあるでしょう。

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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