TOPIXは12日にマドを開けて下がったあと、5日経過した今日現在でもそのマドを埋めていません。先週、1月26日安値をあっさりと下回ったのに続き、昨日18日はとうとう昨年11月安値をも下回ってしまいましたね。一方、いまだにはっきりとした動きが出てないのは日経平均のほうで、昨年11月安値を前に踏みとどまっています。TOPIXはこの先"雲のネジレ"が続きますので、もう一度だけ来週までの動きを見てみましょう。
 しかし、日経平均はダウ平均が大きく下がっても思ったほど下げないです。以前のように300円~400円安といった状況にはならない。何故でしょうか?その理由の一つに裁定取引の縮小が挙げられます。

 裁定取引とは証券会社などが株価指数先物と現物株をセットにして行う取引です。"先物売り・現物買い"と"先物買い・現物売り"の2つがあって、このうち先物売り・現物買いによって作ったポジションの現物の買い残高を"裁定買い残"といいます。その先物売り・現物買いのポジションのうち、先物売りのほうはある特定の期日までに解消、つまり反対売買(売りだったら買い戻し)しなければいけません。でもその時点で裁定買い残が大きく膨らんでいると現物株の強い売り要因になりますから、外部環境などの悪材料で下がった時なども、現物株の解消売りが加わり、一段と相場が崩れやすい要因になるわけです。
 しかし、その裁定買い残が先週末時点で約18年ぶりの水準まで下がってきました。そもそもポジションを組むのは外資系証券が中心です。昨年以降の金融危機のあおりで、取引自体を縮小する傾向にあるため、残高が増えない→解消売りが出ない、相場の加速度的な下げにつながらない、といった状況に現在あるものと思われます。そういった観点では需給は悪いとは言えません。
 約18年ぶり水準というのは、1990年11月22日以来の低水準になったということなのですが、当時その後12月5日に21626円の安値を付けてから、翌年3月18日高値27270円まで約5600円上昇しているのです。今も裁定残や信用残などの仮需が重石になっていないのならば、きっかけさえあれば株価は上昇するでしょう。
 やや横道にそれましたが、以上のように裁定取引の縮小が、動きがはっきりしない理由というか、値幅が大きくならない理由の一つ・・・だと思います。
 もう一つの理由は、値がさ株の強さが日経平均の動きをコントロールしているのでしょう。確かに新安値銘柄が昨日は164銘柄に増加したのは事実ですし、東芝やソニー、野村HDなど主力株の安値更新も相場の嫌な一点ですが、なかには低位株になってしまっている銘柄もありますので日経平均を動かす寄与度は大きくありません。その反面、今日の前場の日経平均の上昇寄与度上位の中でも、京セラやファナック、トヨタ、デンソー、スズキ、TDK、今日前場段階で下がっていた東京エレクや信越化学など、値がさ株といわれるところが着実に上昇してきています。
 かつては野村HDの株価が全体の先行指標になるとして注目する市場関係者はいましたし、ソニーもそうです。ソニーショックで相場の地合い悪化、とまで言われた時期もありました。今でもその点を強く指摘する人がいますが、100年に一度といわれるなか(私は言っていません)、それらが相場全体の核として現在も通用しているとは思いません。
 国際社会で日本を代表する銘柄でも100年もあれば、いつか衰退していく時期が巡ってくるはずです。今、下がっている銘柄は見てはいけません。安いからといって値ごろ感で買ってはダメです。主役交代の時期でしょう。
 次回あたりからは、相場の中身を観察しながら、その主役交代となるべき銘柄を見ていきましょう。

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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