非常に難しい相場展開になってきました。4月30日の日経平均は鉱工業生産が市場予想を下回ったことから売り先行の動きとなりましたが、結局はほとんど下がりませんでした。逆に東証1部の売買代金が活況の目安とされる3兆円に迫り、昨年以降の下落を主導してきた銀行や不動産などで高値更新銘柄が相次ぎ投資家の投資余力がようやく改善してきたように感じております。3月の鉱工業生産が前月比3.1%減少したことや、日銀展望リポートでは、2008年度のGDP成長率が昨年10月の2.1%から1.5%に下方修正されたことなど、マクロ環境は決して良い状況ではありません。株価の先行性から考えると現実に起きている事象(堅調な株価)を素直に受け止めるべきなんでしょう。短期的には過熱感から調整があっても当然の動きではありますが、3月の安値を下回るほどの新しくて強いインパクトのある悪材料は当面はでそうにないですね。

 米国市場では利下げを材料出尽くしとして反応しました。明確に利下げ打ち止め感が出ていれば、大幅に上昇していたような気がします。一部の話によると、まだ利下げ余地ありということで、景気下振れ懸念がまだ残っているとなれば株なんか買ってられない、といった感じなんでしょう。米国では景気後退懸念がある一方で、原油、商品市況などのインフレ警戒感と合わせたFRB(米連邦準備制度理事会)の舵取りが注目されています。
 米国経済のリセッション入りの可能性としては、サブプライムなど外部環境の悪化が景気後退局面の背景にあること、住宅価格の下落によって個人消費にも悪影響が出てきていること、などと論じる方はたくさんいると思います。確かにそうかもしれませんが、景気後退局面は循環でやがてくるもの。問題はどれだけ長期化するリスクがあるかどうかです。いつかの話しのなかで少し触れましたが、日本の不良債権もそうだったように、銀行の持っていた不良債権自体が景気悪化の要因ではなくて、景気後退の長期化が不良債権を大きくし、日本の失われた10年を作ったわけです。
 米国も同様です。証券化商品自体が景気悪化要因ではなくて、景気悪化がその商品の価値をさらに減少させ、ますます企業は悪い状況から抜け出せなくなる。そういう状況になるのが最も怖いパターンですね。そうならないためにも、米国は日本のそのような経験則に習い、早めの金融・財政政策を採ってきました。遅くて小さいといわれる方もいますが、私はそうは思いません。この効果は時が立つにつれて現れてくると思います。景気減速が短期に終焉することを株価は先読みしているような気がするのですが。

 前回、NYダウの昨年からの下落率は日経平均の下落率に比べて小さいと書きましたが、理由は簡単ですね、これまでの数十年間の株価の歩みが違うからなんです。つまり、NYダウに関しては長期上昇トレンドを形成しながら押し目を形成したという考え方。日本は株価の長期低迷からようやく抜け出したあとの最初の上昇に対する調整だったわけです。心理的にどちらの方が景気に対する楽観度合いが強いと思いますか。当然、全然下落していない米株です。日本はもっと大きな上昇波動を形成するなかで、小さな第一波が昨年までの高値、そして、第二波の調整は今年の3月までです。当然、第二波の調整は第一波に対する調整なのですが、第一波は疑心暗鬼で上昇してますから、その調整は意外ともろいものです。調整幅は結構深くなるのが教科書的な考え方ですね。
 先週の金曜日、4月25日に債券先物が急落して取引が一時中断したのをご存知ですか。債券が売られるということは金利が上昇するという意味です。その際に株が急上昇しました。瞬間的ではありますが、この現象は後々何を意味するのかがわかってくると思います。長期金利のおよそ58ヶ月の安値周期がやはりまだ生きています。現在のところは、94年1月から98年9月安値、98年9月から03年6月安値、03年6月から今年の3月安値といった感じです。この先、金利が上昇するとすれば、何が起ころうとしているのかです。でも考えられないですよね、現時点で金利の上昇を考えるなど、馬鹿にされるかもしれませんが、逆に普通では考えられないことを考えようとする努力がマーケットで生き抜くポイントなのかもしれません。
 商品市況の上昇はどうですか。資本主義経済においてインフレなくして株の上昇は難しいです。デフレ下で本格的に株価が上昇することはないでしょう。商品市況の上昇している限りは株式市場の復活の可能性は十分考えられます。 そしてこれからますます商品価格が上昇するとしたら、何が上昇しそうですか。残念ですが、雇用者報酬(給与)が上昇するのはやはり一番最後でしょうね(笑)。

(株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ 東野幸利)

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