今週も下値模索の展開が続くだろう。状況がまったく改善していないからだ。いや、むしろ悪化していると言える。これまでは日本企業の業績は好調、世界景気は米国を中心に改善し、地政学リスクの高まりだけが不安要素だった。従って、北朝鮮を巡る緊張が和らいだり、フランス大統領選が穏当な決着となれば、再び投資できる環境が戻って来ると考えていたが、ここにきて米国景気の陰りがいっそう色濃くでてきた。
先週発表された小売売上高と消費者物価指数はどちらも冴えない結果となった。リーマン危機後、米国景気の回復局面は8年が経過して異例の長さに達している。循環論的にはいつ景気拡大がピークアウトしてもおかしくない。トランプ政権による減税等の政策決定は遅れることが濃厚であり、政策が発動されるまえに米国景気が息切れしてしまう恐れがある。このような状況では6月FOMCでの利上げも危うい状況だ。現在はまだ6月利上げを見込む向きが優勢なので、6月利上げなしに市場の見方が傾けば一段と円高が加速するだろう。
今週は、麻生財務相とペンス米副大統領による日米経済対話の初会合が18~19日に開かれる。今回の会合では、為替云々よりも通商協議の優先度が高いが、だからと言って円安材料があるわけでもない。
市場の重石は引き続き北朝鮮情勢だ。日本時間の16日午前、北朝鮮が弾道ミサイル1発を発射したが、直後に爆発し、失敗したと報じられている。折しも、15日は金日成(キム・イルソン)主席の生誕105年の記念式典が行われ、首都平壌(ピョンヤン)には外国メディアが招かれていた。NHKの取材班が滞在先のホテルから確認するかぎり、ホテルでは、ふだんどおり大勢の外国人観光客がバスに乗り込み市内見学に出る様子も見られたということだ。北朝鮮も事を構える意図はなく、これまで通りの「挑発」「威嚇」目的のミサイル発射だったのだろう。
だからこそ怖いのである。北のミサイル発射は失敗続きだが、無論、わざと失敗しているわけではないだろう。つまり制御不能になっている。であるなら、偶々成功して、真に攻撃する意図がなくとも日本か韓国かもしくは日本海に展開する米軍に着弾しないとも限らない。いわゆる「暴発リスク」 - 偶発的な軍事衝突の可能性がある。
23日にはフランス大統領選の第一回目の投票日だ。ルペンVSマクロンで決戦投票に進めば市場には安心感が広がるかもしれないが、ルペンVSメランションとなった場合、ユーロが急落する恐れがある。いずれにせよ週後半は様子見~リスク回避の流れになるだろう。
まとめると、①北朝鮮を巡る緊張が緩和しておらず、②米国の経済指標に弱さが散見され、③欧州の政治リスクが再び懸念される。こうした状態では押し目買いも入りにくい。ドル円はこの先、1ドル100円まで明確な節目はなく、リスク回避の円高が進む可能性がある。日経平均も18,000円の大台割れが視野に入る。
相場が急展開で反転上昇するには北朝鮮との対話の道が開かれることだ。北朝鮮で11日に開かれた国会にあたる『最高人民会議』では、外交委員会を19年ぶりに設置すると発表された。外交委員会には、6カ国協議や米朝交渉に携わった金桂冠(キム・ゲグァン)第1外務次官らが名を連ねていて、対話モードを強調する狙いがあるとの観測もある。希望はないわけではない。今はリスクにおびえてダウンサイドを見るしかない。それは仕方がないが、急転直下で事態が変わるシナリオも押さえておきたい。
今週の日経平均の想定レンジは17,800-18,500円としたい。