アベノミクス相場。株価はどこまで行くのか。そろそろ一旦休止ではないかとか、様々な意見があります。今日はちょっと視点を引いて、極めてマクロ的に俯瞰してみたいと思います。

世界各国、名目GDPと株価には、長期的に見ると強い相関があることが分かっています。自由資本主義経済国であれば、企業が経済の重要な役割を果たしていることは明白であり、その企業群の代表選手である上場企業の時価総額の和が、その国の経済規模であるGDPと相関関係があることは、腑に落ちます。

例えばアメリカでは上場企業時価総額和はGDP120%ぐらいです。金融危機とか、色々な株価下落イベントが起きても、ねちっこく、或いはしなやかに、株価はGDPの120%水準まで戻してきます。そしてGDP(大切なのは名目GDPですが)が増え続けているので、株価は上昇し続けてきたのです。

日本の株価が去年まで低迷していた最大の理由は、名目GDPが全く成長しなかったからです。そして日本の上場企業時価総額和は、現在GDPの85%程度。悪い時で50%程度まで売られたことがあり、バブル期は逆に140%近くまで買われました。しかしこの10年間を見ると、ピークが第一次安倍内閣の頃(約6年前)で110%程度、大体平均65%辺りを低迷していました。

アメリカと日本の、株価のGDPに対する比率の違いの原因は、2つの要素が考えられます。ひとつはアメリカにはインフレ期待があり、日本にはデフレ期待があったこと。即ち近未来に於ける名目GDPの期待値が、アメリカではその時点より高く、日本では低かった訳です。株価は将来を見込むものなので、当然この差が比率の差になります。

もうひとつは企業の生む富の、株式保有者(株主)に対する分配の高低の違い。企業はその生む富を、株主だけでなく、税金という形で社会に、給料という形で従業員に分配することが出来、或いは内部留保してしまうことも可能です。同じ企業でも株主分配率が高ければ株価・時価総額は高くなりがちでしょうから、国全体の株主分配率の違いが、株価とGDPの関係にも大きく影響します。要は日本はアメリカに比べて株主分配率が低かった訳です。

今、日本はデフレ脱却に真剣に取り組んでおり、実際に脱却できそうな期待が高まっています。株価の対GDP比は、先の安倍内閣時のように、100%程度まで戻るかも知れません。そうすると日経平均で1万6,000円程度です。もうひとつはこの株主分配率の向上。或る意味でのコーポレートガバナンスの改善と表現できるかも知れません。これらが推進されれば、日本の株価はもっと上がりやすくなるでしょう。

私は日本の株価に強気です。しかしただテレビの国会答弁や日銀総裁会見を見ているのではなく、我が国企業の株主分配率の向上や、コーポレートガバナンスの改善に、積極的に、当事者・関係者として、自らの職務として、取り組んでいきたいと思います。株価をもっと上げよう!