今朝、アメリカの大きなエンダウメント(=大学に対する寄付金)を運用するファンドのCIOから電話があり、日本の今後について質問を受けました。私は話しながら、議論しながら、質問を受けながら考えるタチなので、円や日本の株式、債券市場の今後がどうなるかについての考えを網羅的にまとめたことはなかったのですが、今朝ちょうど電話で話しながら考えをまとめることになったので、折角なので活字に残しておこうと思います。

先ず、円安は日本にとっていいことです。トヨタ一社で1円当たり数百億円余計に儲かります。自動車業界全体で1000億円程度でしょうか。日本全体では円安による増益はかなりの規模になるでしょう。円安は日本に、インスタント競争力のゲタを履かせるのです。何故円安が起きている、正確には円高が是正されてきているかと云えば、それは何度も書いているように、アベノミクスによってデフレ容認から緩やかなインフレを作る方向に、国としての政策目標が明確に舵を切られたからです。何年も何十年もポジションを変えられない取引なら格別、1分後でもポジションを解消し反対の形にも変えられる極めて流動性の高い通貨ペア、例えばドル円に関しては、国の長期的な財政問題などはポジションの取り方に影響を与えません。今この瞬間どの通貨の方が実質金利が高く付くかだけでお金は動くのです。

名目金利ゼロに期待デフレ率を足していた日本の期待実質金利が、名目金利ゼロから期待インフレ率(それが額面通りに実行可能かどうかは別として、ある程度のインフレ期待が醸成されたことは間違いありません)を引く期待実質金利、即ちマイナスの期待実質金利になったので、円はどんどん売られている訳です。株価は企業の価値に収斂するバリュエーションと云う考え方がありますが、為替はあくまでも交換レートですから、動くときは収斂すべき場所がありません。あるとすれば購買力平価ぐらいでしょうか。しかしそれも為替が動けば一緒にある程度動いてしまうでしょう。こうしてタガが外れたように円は安くなっています。

おっと、随分長くなってきました。今日はここまでにして、明日以降、国際社会は円安をどう見ているのか、円安には悪いことはないのか、最大の問題であるエネルギー問題はどうか、円安には目標があるのか、アベノミクスが作るインフレの本質的な意味と価値、日本国債は売られないのか、私は今は大して売られないと思うのですがその理由、そしていつ売られるのか、そしてどうしても帰ってきてしまうエネルギー問題の出口などについて、何回かに分けて書いていきたいと思います。