「証券税制の10%軽減税率延長を求めるオンライン署名」は、70万を超える皆様の署名を集め、金融庁と民主党に提出したのは、既にこのつぶやきにも書いたとおりですが、株式に関する税制には他にも思うことがあります。世界中の株式市場の中で、日本の株価がどうもパッとしないのは皆さん御存知の通りです。アメリカは色々な問題があっても結局は右肩上がりにしっかりと上がっていく。今の日本の株価は欧州危機の中にあるイタリアやスペインなどと同じようなパフォーマンスです。困ったものです。日本株には安定した買い手がいないのがひとつの大きな問題だと思います。

銀行・生保などの金融機関には大量のお金が個人から預金や保険購入の形で入ってきますが、国が大量に借金をしないといけないという構造的環境の中で、その運用先は大幅に日本国国債に向けられています。日本は世界のトップを走る年金先進国ですが、それは即ち年金の問題を一番始めに抱えることであり、高齢化と共に年金は支払い超となっていき、即ち資産を売ります。かつてのPKO(Price Keeping Operation、政府の口先介入による年金による株の買い支え)など到底出来る状況ではありません。

金融機関も買わない、年金も買わない。昔も今もこれからも、個人に株を買って持ってもらわないと、この国の株式市場はどうしても腰が弱くなります。外国のヘッジファンドは買ったらいつか売る、売ったらいつか買う。市場の需給バランスの改善には繋がりません。そう考えると、個人もトレーディングに限らず保有を促進する税制の設計・導入が、国のために望ましいと思われます。何故国にとっていいか?我が国の政府部門は債務超過です。我が国のバランスシートを改善するためには、債務側のリスケジュール(年金や郵便貯金・国債債務の圧縮・放棄)をしない限り、増税か(と)資産インフレーションを起こすしかありません。株価が上がれば資産インフレになる。それは国にとってもいいことなのです。

個人の株式保有を促進するためには、長期保有優遇税制と、株が相続財産となった場合の評価方法の調整を、併せて設計・導入すべきだと思います。今は、株が相続財産となった場合、実際の相続がいつ起きても、相続事由発生時の株価で相続税が計算されます。相続に時間が掛かっている間に株価が落ちると、持ち出しになることもあり得ます。だから上から下への富のトランスファーの手段として、株は中々使われません。替わりにボラティリティ(価格変動性)が低く控除額が厚かったり、評価額にバッファーがあり得る不動産が多く使われます。少なくとも株の相続財産の評価額計算は、相続事由発生時か相続時のどちらか低い方の株価で計算されるべきですし、ボラティリティの高さを考えると、何かしらの評価額バッファーを設定すべきです。そもそも不動産からの家賃収入は立派な事業収入で、株の配当収入は不労所得のように、クレジットカード取得時や保険参加時に扱われることも是正されるべきです。

年金はもう資産を買えない。そういう時代にどうやって我が国の資本市場を、ひいては資本主義経済を支えていくのか。そういった観点からの税制を、真剣に考えるときに我が国は来ていると思います。