皆さま御存知のように、株式市場がパッとしません。しかも日本株だけでなく、概ね軒並み世界的にパッとしません。パッとしないのは株だけではありません。債券も売られています。通常の環境では、株が売られれば債券が買われます。株が売られる、即ち景気が悪い、では金利を下げて経済を刺激するだろう、ならば債券の値段は上昇する。とまぁそのように連想される訳です。しかしここまで金利が既に下がってしまっていると、このようなお金の移動もスムースに起きないようです。或いは株はリスク資産、債券、特に国債は安全資産という考えから、「質への逃避(flight to quality)」という現象が起き、株と国債はシーソーのような値動きをするものです。しかし各国の財政に対する不安から、このようなお金の流れも起きないようです。教科書で読んだのとは全く違うことが眼前に展開しています。果たしてお金はどこに行ってしまったのでしょうか?

私は思うのですが、上に書いたような考え方は、きっと行き過ぎています。景気が悪くてデフレになるのなら、仮に金利がゼロの債券でもその魅力は増す筈ですから、債券は買われるべきです。お金は宇宙には行けないので、地球上だけをその居場所を探して回る流動性ですから、地球上の資産という有限の選択肢の中で行き先は論じられるべきで、しかも巨大な額の話しをしていますから、最終的には"比較的に"強い国の国債以外に行き場所はありません。この"比較的"というのが重要なコンセプトで、あくまでもお金は有限の選択肢の中を動いているのです。

恐らく今、お金は預金とか超短期の国債などに移っているのでしょう。機関投資家によるタンス預金化とでも云いましょうか。これは、現代経済に対する不信任です。しかし身の回りを、或いは世界からのニュース映像を見ると、社会は例えば10年前に比べて世界的に良くなっているように思えます。社会や経済に不信任を突きつけるのは、早計ではないでしょうか。やはり行き過ぎている、overshootしているのだと思います。お金はいずれタンス預金(のような場所)から出てきます。割安な資産に対する物色が、いつから始まるのか。社会や経済に対する自信(confidence)が戻り始める時。それを決めるのは、実は自分たちなのだと思います。

コンフィデンスを取り戻す準備をしなければいけません。そして同時にお金の出動の準備も始めなければいけません。そういう観点から、マーケットや社会を見ていこうと思います。