我が国の株式市場に、上場会社のコーポレートガバナンス、企業統治の問題が吹き荒れています。いずれも真相が未だ完全に明らかになっていないので、語り過ぎることは憚れますが、由々しき事態であることは確かです。取締役会、監査役会、監査法人、会社法、SOX法、情報開示ルール、その他もろもろ、内部統制の仕組みや、企業経営に牽制を与える仕組みは何重にも作られてきましたが、それでも尚、どうしてこのようなことは起きるのでしょう。

私が思うに、如何なる牽制の仕組みも経営者を完全に抑え込むことは不可能であり、即ち或る意味で経営者は万能であり、経営者に自制がない限り、コーポレートガバナンスの仕組みを否定するような事件はこれからも起きるでしょう。経営者としての自制を持てる人間を経営者にすること、自制が持てるように経営者となるべき人間を育成すること。変な話に聞こえるかも知れませんが、そういったことにもっと留意しないといけないのではないでしょうか。

資本市場は、社会財たるお金をより必要な場所に再配分し、社会の成長・充実を効率的に後押しする素晴らしい仕組みです。しかし放っておいても自然と予定した通りに動く仕組みではありません。資本市場は誰でも参加することが出来ますが、資本市場を利用する者は、誰でもいい訳ではありません。大勢の少年サッカー人口がなければ強いプロサッカーチームが作れないように、上場企業の経営者を多く輩出するためには、社会自体が表と裏が少なくないといけないと思います。

表示された制限速度を守らないことが普通に感じられる社会。しかしたまに捕まることがある。「これはオフレコで」と云って閣僚がマスコミに話すことが許容されている社会。しかしたまにその内容が書かれると怒ってしまう。被疑者が何を喋っているかが、正式な会見の内容を超えて何故か伝わってきてしまう社会。守秘義務を負っている人が情報を漏らさなければ分からないことが伝わってきても何とも思わない社会。そういった問題を全て直そうとは云いませんが、こういったダブルスタンダードを許容する風潮と、上場企業の内部統制の問題は、深いところで関係のある可能性があることを、私たちはもっと認識しないといけないと思います。