ECB(欧州中央銀行)は、アメリカ、イギリス、日本、スイスの中央銀行と連携して、米ドルを金融システムに供給することにしました。脆弱になっている欧州の金融システムが綻びるのを避けるためですが、一方で世界各国は自国通貨を安くしたい欲望がありますから、中々複雑な話です。通貨もモノの値段のように、供給が増えれば安くなるのが道理です。ですから自国通貨高に困っている、特に日本やスイスにとっては、悩ましい協力の要請だったのではないでしょうか。しかしそれでも彼らは協力した。それだけ事態が深刻だとも考えられますし、それだけ先進国主要中央銀行間のコミュニケーションが進んでいるとも考えられます。恐らく両方が混ざっているのでしょう。リスクを裏腹に流動性が供給される中で、短期的にボラティリティは更に高まる可能性があるでしょう。暫くは注意が必要ですね。しかし全ては、ソフトランディングするために努力・協力していることです。いい結末になることを願いたいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。